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□さびしい
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「シュウさん!」


後ろから聞こえて来た声に振り返ってみると、そこには2ヶ月ほど前から付き合っている少女の姿。


「ミキ・・・・」


呟くように名前を呼べば、彼女は嬉しそうな顔してシュウの隣にくる。

もうすぐ次の授業が始まるため、近くにはほとんど人がいない。

恐らく彼は次の授業はサボるのだろうと思ったミキは、彼のそばにいたいため自分もサボろうと考えていた。


「シュウさんは、次何の授業なんですか?」


きっと知らないと答えるとわかっていても、何か話したいためにそんなことを聞いてみる。


「さあ?・・・・・」

「ふふっシュウさんらしい。」


思っていたこととビンゴし、ミキは軽く笑った。

誰もいない廊下を二人で歩く。

ただそれだけでもミキは嬉しく、満たされていた。

隣を見れば、自分より高い位置に彼の顔。

表情なんて無いけれど、その瞳で自分を写してくれる時は、吸い込まれてしまうような錯覚を起こす。


「なに、さっきから人の顔みて。」


ずっとシュウの顔を見ていると、その視線に気づいた彼がこっちを向き、聞いてくる。


「特に意味はありませんよ。ただ幸せだなぁって。」


思ったことを口にすれば、彼はフッと笑い


「そんなんで幸せに感じるなんて、アンタの幸せは安いな。」


そう言って頭を何回か撫でてくれた。

あまりそういうことをしない彼だから、ミキは顔を真っ赤にしながら俯いた。


それから少しの間二人は静かに廊下を歩いていると、後ろからこちらに走ってくる音が聞こえて来た。

二人もその音に気づき、振り返ってみるとそこには、最近シュウの家、逆巻家に居候している少女の姿。


「シュウさん!」


走って来たため、多少の息切れはあるが、大きく息を吸うと彼の名前を呼んだ。


「なに?」


対してシュウはダルそうに彼女を見ながら言えば、「なにじゃありません!」と怒られた。


「ちゃんと授業に出てください!また留年しますよ?レイジさんも言ってたじゃないですか!」


隣にいるミキに気づいているのかはわからないが、目の前の彼女はシュウにうるさく言い出す。


「うるさいな。俺がなにしようが勝手だろ。」

「そうもいきません!とりあえず授業に出てください!!出てくれるまでシュウさんのそば、離れませんよ?」


彼女がそう言えば、シュウよりもミキのほうがピクッと反応する。

せっかく二人の時間を過ごしていたのに邪魔なんてされたくはない。

だけどそんなこと、彼女は言えるはずもなく、どう答えるのかと不安に思いながら隣の彼を見上げる。


「うるさい。まあ、あんたに付き纏われるより授業に出たほうがマシだ。・・・・ミキ、悪いな。」


ポンと頭に手を置き、そう言うと、ミキと進んでいた方向とは逆の来た道を歩き出す。

そりに満足したユイはシュウの後に続き歩き出す。


取り残されたミキは、素直にいってしまったシュウにショックを受けたのか、少しの間その場に立ち尽くしたままだった。


シュウが出るのなら、自分も教室に行かなくてはと歩き出す時に、彼女の頬には一筋の・・・・・






さびしい



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