狼も歩けば恋に墜ちる
□第1.5話
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…そんなこんなで、現在は帝のマンションの前に居る。
さすがに俺を担いだままエントランスのロックを開けるのはやりにくいからか、地面に降ろしてくれた。
しかし、逃がすまいと俺の手は奴に握られたままだ。
それにしても、結構見栄えの良いマンションだ。
エントランスは広いし、エレベーターなんかは15階までフロアがあるみたいだ。
エレベーターで上に上がる際、ちらりと横を見れば、帝は無表情で全く考えている事が読み取れない。
……何故、俺をここに連れて来たんだ。
チン、と心地よい音が鳴ってエレベーターが開いた。
帝は俺を連れて一番奥の部屋に向かう。
慣れた手つきで扉の鍵を解除して、俺を引っ張って中に入れる。
「ぅわっ!?」
「、」
玄関の段差につまずいてしまい、思わず帝に握られている手を引く。
何とか目の前の奴に支えてもらったが、玄関でつまずくという恥ずかしい行為に、俯いた。
それを帝は「怪我はないか」なんて心配してくれた。
「気をつけろよ。」
「すっすみません、…」
無理矢理俺を引っ張ったのは何処のどいつだよ。
しかし、俯いた時に見えたのは奴の靴と俺の靴だけ
家の人が居ないって事は、サンドバックにされて瀕死になっても誰も助けてくれないじゃないか。