狼も歩けば恋に墜ちる
□第2話
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清々しい晴れ空の下。
こんな天気には全く似合わない程暗いオーラを放つ人物が一人。
「(昨日、…)」
"これから俺に関わるなよ!"
あんな事を言ってしまったからか、今日はストーカーこと、帝をまだ見ていない。
いつもは朝っぱらからついてくる時もあったのに。
帝の家を出て、バイトに向かったのだが、案の定だいぶ遅刻してしまったので、店長の代わりに桜井にこっぴどく叱られた。
基本店長は優しいから、ちょっとやそっとじゃ怒りなどしない。
バイト中も集中出来なくて、何度オーダーを間違えた事やら。
全部アイツのせいだ。
昨日の出来事を全て夢だと思いたい。
「(男に、告白…なんかしてきやがって…)」
「たーちーばーなーくんっ」
「え?」
ふいに肩を叩かれて振り返る。
目の前には、楽しそうに笑っている、知らない人。
しかし、俺と同じ制服を着ている。
同じ高校の奴か。
「あの、誰ですか?」
「さぁ、誰でしょう」
「は?」
何故質問を質問で返すんだこいつは。
俺より背が高いってことは、先輩だろうか。
「帝に聞けば分かるんじゃない?」
「、!」
怪しく笑う、目の前の奴。
帝の知り合いなのか。
確かに見た目は不良のようだ。
だが、何故俺と帝に関わりがある事を知ってるんだ。
「昨日帝に連れて行かれたんだっけ?」
「、誰だよお前。」
にこにこと、無駄に笑顔ばっかのこいつに何だか腹が立つ。
「俺は帝のオトモダチ。柳刃(ヤナギバ)っての。よろしくね?」
柳刃と名乗った奴は、無理矢理俺の手をとって握手をする。
無駄に馴々しい奴だ。
明らかに怪訝な顔を見せても、奴は面白そうにしているだけだ。
すると、いきなり柳刃が俺の首元に指を突き立てた。
「キスマーク、見えてるよ。」
「、!」
思わず奴の手を振り払い、自分の制服の首元を隠すように掴む。