狼も歩けば恋に墜ちる

□第2話
1ページ/13ページ

清々しい晴れ空の下。
こんな天気には全く似合わない程暗いオーラを放つ人物が一人。


「(昨日、…)」


"これから俺に関わるなよ!"

あんな事を言ってしまったからか、今日はストーカーこと、帝をまだ見ていない。

いつもは朝っぱらからついてくる時もあったのに。

帝の家を出て、バイトに向かったのだが、案の定だいぶ遅刻してしまったので、店長の代わりに桜井にこっぴどく叱られた。

基本店長は優しいから、ちょっとやそっとじゃ怒りなどしない。

バイト中も集中出来なくて、何度オーダーを間違えた事やら。

全部アイツのせいだ。

昨日の出来事を全て夢だと思いたい。


「(男に、告白…なんかしてきやがって…)」

「たーちーばーなーくんっ」

「え?」


ふいに肩を叩かれて振り返る。

目の前には、楽しそうに笑っている、知らない人。

しかし、俺と同じ制服を着ている。

同じ高校の奴か。


「あの、誰ですか?」

「さぁ、誰でしょう」

「は?」


何故質問を質問で返すんだこいつは。

俺より背が高いってことは、先輩だろうか。


「帝に聞けば分かるんじゃない?」

「、!」


怪しく笑う、目の前の奴。

帝の知り合いなのか。

確かに見た目は不良のようだ。

だが、何故俺と帝に関わりがある事を知ってるんだ。


「昨日帝に連れて行かれたんだっけ?」

「、誰だよお前。」


にこにこと、無駄に笑顔ばっかのこいつに何だか腹が立つ。


「俺は帝のオトモダチ。柳刃(ヤナギバ)っての。よろしくね?」


柳刃と名乗った奴は、無理矢理俺の手をとって握手をする。

無駄に馴々しい奴だ。

明らかに怪訝な顔を見せても、奴は面白そうにしているだけだ。

すると、いきなり柳刃が俺の首元に指を突き立てた。


「キスマーク、見えてるよ。」

「、!」


思わず奴の手を振り払い、自分の制服の首元を隠すように掴む。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ