狼も歩けば恋に墜ちる
□第3.5話
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「、……ぅん…?」
頬がヒヤリとして、意識が浮上する。
目を開いた先には、白い天井。
俺の身体を覆う、白い布団。
何度見渡しても、見覚えのない広い部屋。
何処だ、ここは。
上半身を起こせば、ベタベタに濡れたタオルらしきものが額から落ちてきた。
たぶん先程の頬の濡れは、このタオルから滴り落ちた水だろう。
だが、何故俺の額にこんなものが…?
そもそも、俺は何でこんなところに…、
──にゃあ
「え…?」
か細い、甘えたような声が響き、ベッドが揺れる。
視線を足元に移せば、足に擦り寄る白猫が。
上半身を起こした状態のまま硬直する。
頬の毛が柔らかく膨らんでいて、透き通るような金色の瞳。
こんな特徴的な猫を間違えるわけがない。
待て、何故この猫が居る場所に俺が居るんだ…。
やっと部屋に漂う、酔うような甘い香りに気が付いた。
そうだ、倒れた俺はあいつに抱き上げられて…、
意識を失う前の記憶を辿っていると、部屋の隅にある扉が開いた。
「…………、」
「……起きたのか。」
透き通るような金髪の人と、視線がかち合う。
お盆を手に持った捺樹がベッドに近付いてくる。
ねこも、その主人に擦り寄った。
「…大丈夫か?」
「、まぁ…」
気まずくて、頷くように視線を下へ落とす。
すると、捺樹は俺が寝ているベッドの脇に腰を掛けた。
その膝の上にねこが座り込む。
「…心配した。」
「………。」
伸ばされた手は、一度髪を撫でられるように触れてから頬に滑り落ちる。
心配した、なんて
そんな言葉誰が信じろと言うのか。
今まで散々ストーカー紛いの事をしていたのに、この一ヶ月は一度も姿を見ていないし、気配も感じなかった。
突然現れて、勝手に助けられてもどうしろというのか。
それに、廃墟であんな事があった後では尚更。