執事と愉快な主達

□プロローグ
1ページ/19ページ


「はぁ…」


ある繁華街の一角のバーに俺、春樹・如月は居た。

目の前にあるカクテルは、もう何杯目なのかすら覚えてない。
あまりお酒は強い方ではないのに、つい飲み過ぎたようだ。

薄暗いこの店には俺を含め、もう三人しか客は居なくなった。

俺以外の客二人は、カップルなのか、男女二人で微酔い気味に楽しげに話している。
つまり、孤立しているのは俺と、この店の店主、マスターだけだった。

この店は初めて来たが、マスターは少し白髪混じりの老いた人だが穏やかな雰囲気で、とても居心地が良い。


「マスター、これお代ね。釣りはいらねぇから」

「きゃあっ格好いい〜!」


お札何枚かをカウンターの上に置き、その彼氏の腕に彼女が絡む。


「有り難うございました」

「……。」


マスターは店を出て行く客の背中に頭を下げた。

客は俺一人になってしまった。

腕時計を確認すれば、とっくに0時は過ぎていた。
まだ1時くらいだろうと思っていた為、内心焦り、目の前のカクテルを一気に飲み干す。

この店は朝まで営業しているが、流石に客一人の為に付き添うマスターが可愛そうだと思い、あと一杯だけ飲んで帰ろうかと思った。


「マスター、おかわりお願い。」

「…。」


空になったグラスをマスターの前に翳すと、不満気な目で見下ろされた。


「(何だ…?)」


やはりこんな深夜まで居て迷惑な客だと思われたのだろうか。

俺は一瞬そう考えて、グラスを持つ手を引っ込ませようとしたが、マスターに俺の手からグラスを奪うように取られた。

そして、直ぐに新しいカクテルを出された。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ