竜と悪魔と鋼鉄と

□Letzte:あたしと彼と空と鋼鉄
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語り終える頃には、迷子の子は眠ってしまっていた。
公園ではぐれてしまったらしく、たまたま近くに居たあたしがその子に声を掛けたのだった。
ふと、視線を起こすと、車椅子に乗った人影が、女の人を連れてこちらへ向かっているのが見えた。
アレックスと、もう一人は知らないが、恐らくこの子の母親だろう。



あの時の、UZUMEの判断は効を奏し、あたしは無事に彼の元へ辿り着けた。
彼は思いの外元気そうで、あたしは泣きじゃくりながら、懐かしくも厚い胸板を叩いた。

斉藤の話をしても、彼は特に驚いていなかった。
寧ろ、秘密がばれたような居心地の悪い顔をしていた。
きっと、彼も知っていて、それでも、あたしを好いていてくれたのだ。
騙されていたという気持ちと、好きでいてくれたという気持ちがない混ぜになって、あたしは更に泣いた。
泣いて、怒って、また泣いて、気付いたら、彼のベッドにつっぷして寝てしまっていた。

アレックス。
彼の、ODの名前だ。
朝食を取りながら彼は名乗り、その場で書類を書いた。
レイヴンを引退すると。
そして、紹介したいレイヴン候補がいるとも。

そうして、あたしはレイヴンズアークに登録された。
あたしはレイヴンになったのだ。
なって、ACの勉強もした。
依頼も、アリーナも参加するようになった。
相変わらず上手くはないけど、彼の脚を治すには頑張るしかない。

今日だって、アリーナに出るから来てるのだけど、外の空気を吸いに出て、この迷子に出会ったのだった。
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