竜と悪魔と鋼鉄と
□Null:雨と少女と鋼鉄と
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灰色に染められた世界を、轟音が蹂躙する。
天にあるはずの太陽、その恵みの光りを覆う帳は、怨みを晴らすかのように大量の粒を落としていた。
生み出す轟音はそのせいだ。
地上も、灰色を凝縮した煙を立ち上らせている。
まるで、かつて天と地が一つであったという伝説のように、鈍色の臍の緒は空と地上を繋いでいた。
単色の世界で、唯一つ浮いた存在があった。
暖色に染め上げられたその人影は、灰色の光景にの中では一際異彩を放つ。
硬く重い足音を鳴らし、巨大な人影は歩いていく。
何かを探しているように見渡していたそれは、不意にコンクリートの山の前で立ち止まった。
空気の炸裂する音と共に繋げていた物を落とすと、空いた左腕で瓦礫を払う。
小さな、人影が倒れていた。
天井が無くなった事で、雨粒は嬉々として人影…彼女を濡らしていった。
冷たさで気付いたのだろう、張り付いた緑の髪をそのままに、少女が起き上がる。
意識も定かではない虚ろな瞳で、彼女は橙色の巨人を見上げた。
「a―――…」
少女は手を延ばす。
無意識に延ばした、その手の行方は彼女すらわからない。
だが、少女の前に立つ巨人は知っていたのか。
碧い光を眼に燈し、その巨人は手を差し延べた…
鋼鉄の腕を。