偽りのソラで

□開演
1ページ/28ページ

―――ピ

レーダーに赤い点が、3つ映し出される。
彼女は機体を点を発する主へと向けると、ライフルをFCSの範囲外から発射。当たるはずの無いその弾丸は、しかし敵の逆関節MT"OSUTRICH"に命中。慌てて後退するMT。
だが、あっさりと距離を詰められ橙色のブレードで一刀の元に切り捨てられる。

残り2。

――彼女は止まらない。

ACを上昇させ、手近な建物に登る。
残りの2機は一箇所に固まり、何とか生き残ろうとしているようだったが・・・無駄だ。
最初期パーツでしか組まれていないとはいえAC、しかも彼女は強化人間の能力を持っている。MT達に生きる選択肢は存在しなかった。

彼女は少しづつ高い建物へと飛び移りながら上昇。脳でブースター出力を制御しながらMTの真上を取ると、ブースターを切り自由落下へ移行した。

『!!――上だと!?』

MTのパイロットは、正面に集中していてレーダーを見ていなかったらしい。機体を動かそうとするが、
―――ドガン!
時既に遅く、ACに乗られてしまう。

『ひぃぃぃ!糞っ!クソォォ!!』

パイロットは必死に機体を動かすが、頭頂部のライフルは抑え込まれており、ピクリとも反応しない。
唯一動いたのはカメラのみ。しかもそれはACの頭部を映し出し、パイロットの恐怖を助長するだけだった。

『うわぁぁぁ!!嫌だ助けてくれ!死にたくない、助けて、助けてぇ!嫌だ!嫌だぁぁぁ!!!』

その声が聞こえているのかいないのか、ACの左腕に光が収束して刃を象る。そしてその腕を、MTのコクピットに突き刺した。

コクピットの天井が朱く染まったかと思うと光が突き抜け、パイロットは内臓を全て焼かれて絶命した。


――彼女は止まらない。


残りの1機は背中を向けて逃げ出していた。既に戦闘の意欲は無いそれに、彼女は肩武器のミサイルを展開した。FCSが敵機を捕捉し、MTにロックを掛ける。
彼女は立て続けにトリガーを押した。


――ロック―発射―命中。

――ロック―発射―命中。

――ロック―発射―命中。


3発当てた辺りでMTが反動で転倒する。

彼女が動く。
ライフルを撃ち込みつつブースターで接近する。

―――ガン!

―――ゴッ!

―――バキン!


やがてMTの脚に弾が当たりその場から動けなくなる。

その機体に向かって彼女はブレードを形成し、MTを縦一文字に切り上げた。

反動で箱型のMTのボディが中に浮き、放物線を描いて地面に激突、爆発炎上した。


通信コールが響き、試験官の声が無機質に彼女の耳に届いた。

『――認めよう、君の力を。たった今、この瞬間から君はレイヴンだ。』


彼女―アザカはヘルメットを外す。そして、コンソールレバーを撫でながらたった今誕生したばかりの愛機に挨拶をした。

「これからよろしくね………Geranium(ゼラニウム)」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ