偽りのソラで
□動向
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―――ッ!!
かつて理想郷の名を冠していた地を震わせ、光の翼を持つ狂った天使が、空気を切り裂く。
その狂天使は、右手のロンギヌス――昔、聖人の死を確認するために使われたとされるものと同じ名の槍を、眼前に佇む黒き獅子へと振り下ろした。
―――チン…
極音速で突き出された槍を、獅子は身体を捻って躱す。右肩の装甲を掠り、槍は遥か後退へと抜け去ってゆく。
その一瞬後に、世界に響き渡りそうな程の轟音が上がり、Schwarz・Loweは、その音が上がった後方へ向き直った。
そこには天使。基部から伸びた不可視の翼は帯電し、神々しさよりも凶々しさが際立っている。
霧は、既に無い。天使の翼が羽ばたく度に、それはことごとく吹き飛んでいた。
「どうしたのさ?破壊するとか言っといて防戦一方じゃない?さっさと本気出さないと、殺しちゃうよ?」
『・・・・そうですね。そろそろ良いでしょう』
エクルシェアの挑発に、ただ淡々と、ランスはACの背部装甲を展開した。
『では、我等は"本気"で行きますから、せいぜいあがいて下さいね。』
台詞が終わると同時にOB/0shiftが発動。青白い光を纏った獅子が、風となって疾駆する。
「へぇ!そっちだっておもしろい物持ってんじゃない!」
迫り来る黒獅子を迎撃しようと、エクルシェアは左手のレーザーブレード/アスカロンを発生させた。すくい上げるように二本のブレードを振り上げ、Schwarz・Loweを狙う。
ドラゴンスレイヤーとも呼ばれた事のあるそれを、ランスはOBノズルの右側のみを閉じて急旋回。鋭角的な軌道を描いて回避した。
「!?」
軌道変更して再び突撃する獅子が、灼熱の刃を左腕から伸ばし、天使を切り裂こうと振り抜く。
その一撃を、エクルシェアは機体の背を反らす事で避けた。アクラシエルの、強固かつ柔軟な腰部機構だからこそ出来た、荒業だった。
そして、ブレードを振り抜いて硬直しているSchwarz・Loweに、今一度ロンギヌスが迫る。
その一撃を上昇する事で逃れたランスは、無防備な体勢のアクラシエルに銃撃するが、盾と一体化している槍に阻まれて効果はない。
と、翼が羽ばたいた。
閃光と共に超加速した天使が、爆音と災厄を引き連れて迫る。それは一瞬で獅子の横に列ぶと、制動に核パルスを放射。死角からロンギヌスを振りかぶった。