偽りのソラで
□亡霊
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午後の静寂を突き破ったのはベルの音だった。
電子音ではない、金属同士がたたき合う音は風情を感じるが、人の昼寝の最中に鳴るのはどうも頂けない。
時計の短針が刺すのは2の文字板。ティータイムにはまだ早過ぎるし、彼女が来る時間でもない。
はて、この隠居に何か用だろうか?
ベルを鳴らす電話の受話器を取ると、私が口を開く前にまくし立てられた。
彼女だった。
内容を聞くに、どうやら急な事のようだ。普通なら彼女が察知するのだが、何やら忙しかったらしい。
―――ふむ
仕方ない、私が出るとしよう。
最早表舞台に出る事の無い私だが、厄介事を払うくらいなら出来る。
それにしても、まさかこのような辺境にACが、しかも複数機現れるとは…
まあいい。
踵を返し、私は地下へ向かった。
動かす事も無くなったが、整備は定期的に続けてある。作動不良は起こらない筈だ。
彼女のお陰で、ガレージは片付けられている。照明を付けると、懐かしい物が目に入った。
落ち着いた赤に金のエイドカラー。私の愛機、Dullahan(デュラハン)だ。
パイロットスーツは着ない。どうせ必要のないものだ…
さて、行くとしようか