竜と悪魔と鋼鉄と

□Letzte:あたしと彼と空と鋼鉄
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「有難うございました」

そう言うと、母親は子供を背負って去って行った。
あたしはベンチの端に座り込んで、アレックスが寄り添う。
このまま、頭を撫でて貰おうかしら。なんて思う。
と、頭に心地好い圧迫感。
ああ、言う前に態度に出ちゃったのかしら? 良く考えてみれば頭を傾けていた気がするし、無意識に催促してしまったのかもしれない。

まあいいや。
運動出来ないせいでなんだか丸くなった彼の、しかしごつごつした手の感触。
ずっとこのまま撫でていて欲しい。
なんて、思っていたのだけど。


「人が見ない間に、随分と甘えん坊になったな。愛玩動物か馬鹿」
「・・・斎藤か、久しぶりだな」

嫌な奴に見られた。
手を止めてアレックスが振り返り、あたしもそれに倣う。けど、手は止めないで欲しかったかなぁ。

見れば、スーツ姿のひょろっちい知った顔と、そいつに日傘を持たせているドレス姿の小さな少女。
斎藤と……誰だっけ。

「えーと、か・・・カブ、かぶら……カビラさん?」
「そうなんですって言えば良いのかしら?」
「この馬鹿に複雑な名前を覚えさせるのは無理です、鏑射寺嬢」

かぶらいじ?
なんか聞いた事あるけど、誰だっけ・・・
なんだか混乱してきたあたしに、「ラティでいいわ」と、その子は言ってくれた。
ラティちゃん、ね。覚えた。と、思う。多分。

「久しぶりに会ったのだし、もう少し話し込んでていたいのだけれど。私も何かと忙しくて」

そう切り出した少女に、何か違和感を覚える。
この子、もしかして斎藤より偉い人?
斎藤を見ると、見慣れた軽薄な趣は無く、彼女を守るSPみたいにピシッとしている。なんだか面白い。ついニヤついてしまう。
そんなあたしに気付いて、斎藤は顔を思い切り顰めた。
ラティは続ける。

「一週間後、UZUMEの破棄が決定しました」
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