竜と悪魔と鋼鉄と

□Zwei:竜と舞踏と弾丸と
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緑の悪魔が戦槍と化したのを、私はモニター越しに見た。
戦槍は、地を這う敵機の一つを捉え、勢いもそのままに赤銅の土煙に消える。
ベルデの過激なパフォーマンスは、混乱という相応の結果をもたらす。
銃口が彼女に向くが、それは私を疎かにするという愚行だ。
この私の機体"シルトドラッヘ"の牙は、既に彼等の喉元にあるというのに。

ロック、ファイア。
天高く放たれた6機のミサイルは、間違う事無く脳天へ。
頭を潰され、臓物を撒き散らすように爆発したそれらを上から眺め、私は鼻を鳴らす。


増援は、まるで打ち合わせていたかのように早かった。
広範囲レーダーに映る数は、恐らく40。

「GD、右だ」

手近な坑道を彼女に示し、続いて後退する。
最強の個人兵装であるACが質ならば、大量生産のきくMTはまさしく量。
技術的に互換のある戦闘用マッスルトレーサーは、ACと祖を同じくしながら、全く逆の用法を用いるのである。
1対多を可能にするのがACではあるが、この数は些か歩が悪かった。


『どうするのOD? これ、袋のネズミってやつだと思うんだけど・・・』
「策はある」

ベルデの不安を抑えるように、私は冷静に答える。
今考えたのだが。

「配布されたマップを見る限り、この坑道の通路は狭い。その上、さながら迷路のようだ。量が強味の人海戦術も、狭ければ機能しにくい」
『……わかったわ。ゲリラ戦なら、あたし達のが強いわね』
「いや、私は奥に進む。トラップ代わりにミサイルを置いて行く。頼んだ」
『え、私一人?』

面食らうベルデの後ろには敵影。
真っ正面から入るとは、部隊長は捨て駒というものがわかっているらしい。

右手のKRSW、通称カラサワを叩き込み、私は即座に後退する。
こうなっては、ベルデも不満など言ってはいられない。
火蓋は落とされており、私も彼女も、安い賃金で操狗と果てた彼等も、不様な踊りを披露するしか無いのだ。

背中のミサイルを切り離し、私は彼女に背を向けた。


 
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