竜と悪魔と鋼鉄と

□Zwei:竜と舞踏と弾丸と
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巨大な昇降機は、ここが発掘場であった名残か。
そこにシルトドラッヘを乗せた私は、上で奮闘しているであろうベルデに思いを馳せる。


レイヴンズアークから派遣された私の本来の依頼は、実の所、ベルデの護衛である。
以前の依頼で、キサラギの研究所から彼女を持ち帰ったという縁からだ。
彼女に好かれているという事かららしいが、私自身は彼女を愛している訳では無かった。

しかし、それも昔の話だ。

数年も一緒に暮らしているうち、餓鬼に興味の無かった私に変化が訪れる。
ふと気付けば、いつの間にか彼女を好いている私がいたのだ。
結婚は、ベルデの希望とミラージュにとっての管理上の都合が噛み合ってのことだが、私も悪い気はしなかった。
彼女との絆が、より明確になった。

スラム街から抜けだそうと足掻き、血を吐く思いでレイヴンになり、ケルベロス・ガルムの片棒を担いだが為に犯罪者に堕ちた。
その私が、こんな幸福を掴める等とは思いもしなかった。
人生とは、わからないものだ。


『こちらナイト。OD、GDと離れてるようだが?』

……オペレーターか。

「無線封鎖はいいのか?」
『形だけの封鎖に意味なんざあるか』

吐き捨てる斎藤に苦笑する。
もともと無線の封鎖とは、無線傍受による情報の漏洩と、電波の探知による位置の割り出しを防ぐ為のものだ。
しかし、それが通用するのは部隊を運用する場合であり、しかも、単体では電波を発しない歩兵部隊で適用されるようなものなのだ。
ACのような、熱と音と電波を垂れ流す金属の塊相手には不適切と言えよう。

「慣習に乗っ取るのも大変だな」
『そうだな。それでもう一度聞くが、あのバカ一人で大丈夫なのか?』
「信用している」
『そうはいうが、はっきり言ってレイヴンとしての実力は低いだろ。万が一あいつが死んだ場合、契約不履行だけじゃ済まない事くらい・・・』
「わかっている」

そんな事はわかっている。
私も決して高いランクにいる訳ではなく、せいぜい40位程度。中堅と呼ばれる程度の位置だ。
ベルデは、更にその下、俗に下位レイヴン等と呼ばれる位置着けとなる。
いかにゲリラ戦を行ったとしても、敵の数は多い。
恐らく、彼女も只では済まないだろう。

・・・・しかし。

それでも信じたいと思うのは、私の甘えだろうか。
それとも、ただの惚気なのだろうか。

私も、随分と甘くなったものだ……



昇降機が止まった。
最下層だ。
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