竜と悪魔と鋼鉄と

□Drei:銀と悪魔と守人(モリビト)と
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『あのね、【アオ】の中に包まれたら、みんなが何処にいるかわかって、でもあなただけが見えなくて。そしたら黒い大きなドームがあって―――』
「通信不可能領域で、お前が口走ってた。覚えてるか?」


―――覚えていない。


「じゃあ、今回の戦闘の内容、覚えてるか?」
「・・・それは」

言い出しかけ、あたしは言葉に出来ない事に気付く。
だって、あんな……

「覚えてないんだな?」

言われ、あたしは頷くしかなかった。
だってあんなの、あたしじゃない。
変に視界が青みがかって、頭がパンクしそうで、あたしの身体が勝手に動いて、でも、何故そう動いたのか理由はわかる。
そう、まるで・・・

あたしがもう一人居るような。


「・・・き、きっと疲れてるのよ。ほら、年頃の女の子なのよ? 鈍い男にはわからない悩みだってあるんだから?」
「こいつが? そうか?」

キャシーがフォローを入れ、斎藤はいつもながら失礼な受け答え。
でも、あたしは聞いていなかった。
だって、自分が自分じゃなくなるなんて今まで考えた事なかった。
もし……もしそれで、自分じゃないあたしがODの事を傷つけたりしたら・・・

「おい、聞いてるのか?」
「ひょぉお!?」

思考に潜っていたあたしを戻したのは、斎藤だった。
けど、あんまり顔が近かったものだから、思いっきりのけ反ってしまう。
振り上げた膝が、彼の顎を打ち上げた。
キャシーが、あ、とか言った気がする。

「……ええと」

やや困ったように空を仰ぐと、気を取り直したように彼女は手を打った。

「これの事と、これが言った事は忘れちゃいましょ? 彼が言う事なんて、どうせ悪魔のささやきみたいなものよ」

・・・そうかしら?。

でも、キャシーが今まで間違った事を言った試しはない。
そうね、忘れる事にしよ。


けれど、あのうわ言はなんだったのかしら?


 
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