竜と悪魔と鋼鉄と

□Sechs:碧と悪魔と守護騎士と
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地下司令官制センターのモニターには、立ち上る煙が至る所から昇る様が映し出されていた。
状況は芳しくない。否、最悪と言ってもいい。
立体的に配置された監視モニターから見える状況は、こちらの敗色が濃厚だという事実を見せ付けている。

コンソールの示す基地の状況が、リアルタイムに更新されていく。被害は拡大するばかりだ。


状況をおさらいしよう。
まず、ODがやられた。
信じられない話だが、あの敵ACはこの基地の配置を完全に把握していた。真っ先にAC格納から出たシルトドラッヘを一撃で擱座させ、残ったディ・ツァーバーフレーテを煙に蒔いた。さらには砲台とミサイル発射機を沈黙させ、基地守備隊を確実に削っていっていやがる。
タンクACだから火力は高いだろうと予想はしてたが、両肩武器の大口径エネルギーキャノンを背負っているとはな。重装甲を誇るシルトドラッヘだったから原型は残っているが、コクピットを破損したらしくODからの連絡は途絶えた。今は救出作業中だ。
ディ・ツァーバーフレーテは今も敵ACを追い回しているが、頭を血が上っていて命令を聞こうとしない。何度か通信をしたが、返ってくるのは嗚咽と怨嗟だけだ。

敵ACの構成は、主にクレストのパーツで出来たタンク型。ただし、コアはミラージュ製、つまりうちの製品だ。武器は、前述した大口径砲の他に、右のライフルと左のハンドガン。MTの撃破にはライフルを使用しているようだ。
コアは火力重視のEO(イクシードオービット)ではなく、OBで機動力を確保している。そのOBで縦横無尽に駆け巡り、正に神出鬼没と化している。

「103倉庫、破壊されました!」

被害報告担当のオペレーターが叫んだ。食料倉庫か、暫くはレーション生活だな。それを皆知っているからか、只でさえぴりぴりした空気に怨念のような物が混じった気がした。

否、焦るべきだ。

自らの命は保障されているからか、はたまた実戦経験が無いからか、ここの連中は何処かしらゲーム気分だ。防衛部隊に恋人だって居るだろうに、モニターを挟んでしまえば、防護装備が万全な事もあって現実味が薄らいでしまう。パニックで何も出来ないよりはましかもしれないが。
オペレーター達のそれに、輪を掛けて酷いのが、ここの基地司令だ。こういう事に疎いのだろうが、作戦参謀に全て任せて完全に人事だ。そりゃ、周りから昼行灯なんて言われても仕方が無い。
その昼行灯の顔が歪む。
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