竜と悪魔と鋼鉄と

□Sieben:覚悟と悪魔とその先と
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光。
天井からぶら下がる電灯を、あたしは呆っと眺めていた。
光。
あたしを照らすそれを、掴もうと手を伸ばそうかどうか考える。
ううん、手を伸ばすべきだと思う。あたしの居場所は、きっとそこだから。
けれど・・・


そこまで考えた時に、何やら外が騒がしくなった。沢山の足音だ。それは近付いてきて、不意に部屋の前で止んだかと思えば、扉を開けてぞろぞろと入ってきた。警備隊だった。警棒とヘルメットで武装した人達が、あたしを取り囲む。

「部屋を移動して貰う、抵抗はしないよう」

ていこう・・・ 抵抗?
なぜ?
意味はよくわからないけど、暴れてもしょうがないので付いて行く。あまり距離はなかった。エレベーターからさらに遠ざかるように移動すると、なんだか物々しい分厚さの扉が口を開けて待ち構えていた。

「入って下さい」

警備隊の一人にそう言われ、けれど、あたしは動けないでいた。
ダメだと、心が叫んでる。そう、ダメだ。こんな扉じゃ、光は届かない。あたしに光は届かない。だって、あの向こうには闇しか見えないのだから。

「入って、頂けるかな」
「嫌よ、こんな暗い所・・・」
「―――入れて差し上げろ」

瞬間、あたしは弾かれるように振り向いた。表情の無いヘルメットを掻き分けるように走り出して、首筋に衝撃を覚えて倒れる。
立ち上がろうとするけど、すぐさま組み伏せられ、もう一度首に痛みが来る。鈍痛とは違う、刺すような。
それが何かはすぐに解った。身体が動かない。
痺れ薬を打たれて動けないまま、あたしは部屋に運ばれた。薄いベッドに寝かされ、扉を閉められる。動けない事を良いことに、変な所を触られた気もする。
絶対赦さない。


『まさか、隣に容れられるとはな』

斎藤の声だ。隣という事は、もう一つ部屋があるのか。

『この対応でわかった筈だ、この基地に、お前の居場所は無い。俺達の事はどうでもいいんだ。いつでも動けるようにしとけ』

動ける? 逃げるって事? この扉を開けてくれる人が居るの?
質問したい事はあったけど、口も痺れてまともに話せない。

ただ、一つだけはっきりした。

あたしは、ここを出なくちゃいけない。出て、ODを助けるんだって。

ありがとう。

 
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