竜と悪魔と鋼鉄と

□Sieben:覚悟と悪魔とその先と
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部屋の中は狭い以上に壁が厚くて、あたしの全力でも壊せないような硬さを誇った。天井には、今にも千切れそうにぶら下がる電灯が一つ、床には硬いベッドにもう一つのドア。その先にはトイレ。そこもやっぱり壁は厚い。
こんなに分厚く、狭い世界に押し込められて何日経ったのだろう。5〜6回は寝ている気がするから、経過日数もきっとそれくらいだろう。
扉の下を潜ってやってくる食事だけが日々のアクセントになりつつある中、それは起こった。
天井より大量の埃が落ち、飲もうと手に取ったスープに降り懸かる。最低だ。誰よ、こんな地響きだした奴。
思い切り顔をしかめると間髪入れずに大音量が発生する。この前聞いたばかりのアラート、襲撃だ。


『総員、第一種戦闘配置。北西より敵部隊の進攻を確認。所属はキサラギ、数は22。内、1機はACである可能性大。繰り返す―――』
『来たぞ』

斎藤の声が聞こえた。
まさか、いつでも動けるようにって・・・

「こうなる事、知ってたの・・・?」
『ああ。ACは、おそらく鏑射寺の愛染だろう。彼女が残存戦力を沈黙させ、MTから制圧隊が侵入する。多分、そういう手筈なんだ』

キサラギの動きを予め知っていた? 斎藤は、キサラギのスパイだった?
視界が揺らいだ。
壁からの声は続く。

『色々と、謝らなきゃならない事がある。だがその前に、お前に聞きたい事がある』
「・・・何?」

あたしが出すのは硬質の返事。
ずっと騙されていた事と逃れられていなかった事、それがあたしの態度を硬化させていた。
隠すつもりもない、拒絶の態度だ。

『アークに行くかどうか、決めたのか?』
「関係ないでしょ? いえ、関係はあるわよね、報告しなきゃならないんだもの。何処に行っても自由が無いなら、アークに行くしかないじゃない! でも絶対、あんた達の言いなりにだけはならないんだから!」
『そうか、なら良いんだ……済まない』

言葉が続かなかった。ありったけの罵声を浴びせようと思った。なのに、たった一言の謝罪で全て引っ込んでしまう。
何故。言いたいのに、言い出せない。
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