都会の図書館

□父と娘(中編)
3ページ/11ページ


「これが、月那ちゃん?」

もゆが持ってきたアルバムを全員が見ていた。そこには、若かりし父とその妹が映っていたのだった。

「うん、すごくかわいいでしょ?」
「そうだね、なんか…もゆと似ている感じがするのは気のせいかな?」
「そうなんだよね…初めて見たとき自分を鏡で見たような感覚になったもん」

一枚の写真を持っていた岬がそれをもゆに渡した。
もゆはもう一度それを見直した。

「でも…月那ちゃん。どうしてケガなんかしていたの?」
「そうだね。話を戻そっか」

もゆがアルバムを横に置き、
もう一度話を戻すことにした。

「ケガが多くなっていた頃ね、ちょうど月那ちゃん自身もサッカーを始めててね、男子に混じってやってたらしくってね…すごかったんだよ?テクニックもなにからなにまで」
「ちなみに、月那ちゃんってポジションはどこなの?」
「GK、若島津君や若林君、森崎と同じだよ」

3人とも驚いた。

「え?女子が男子のサッカーのGKやってたのか?」
「うん、そうみたい…月那ちゃんが来たおかげでそのチーム、全国大会も優勝しちゃったんだよ?」
「……大会側の許可ももらってたのか…すごいな」
「うん…でもね…それで、男子の人気に火がついちゃってさ、月那ちゃん…女子からいじめられたみたい」

それは、かなり悪質なものだったらしい。
後ろからつきまとわれたり、サッカーの練習を妨害されたり、使い慣れたキーパーグローブをカッターで切られたり、

−そんな、ある日、月那が一歩も外に出なくなってしまったときがあったらしい。


それが、伊月の心の怒りを頂点に達した出来事でもあった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ