都会の図書館
□父と娘(中編)
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「これが、月那ちゃん?」
もゆが持ってきたアルバムを全員が見ていた。そこには、若かりし父とその妹が映っていたのだった。
「うん、すごくかわいいでしょ?」
「そうだね、なんか…もゆと似ている感じがするのは気のせいかな?」
「そうなんだよね…初めて見たとき自分を鏡で見たような感覚になったもん」
一枚の写真を持っていた岬がそれをもゆに渡した。
もゆはもう一度それを見直した。
「でも…月那ちゃん。どうしてケガなんかしていたの?」
「そうだね。話を戻そっか」
もゆがアルバムを横に置き、
もう一度話を戻すことにした。
「ケガが多くなっていた頃ね、ちょうど月那ちゃん自身もサッカーを始めててね、男子に混じってやってたらしくってね…すごかったんだよ?テクニックもなにからなにまで」
「ちなみに、月那ちゃんってポジションはどこなの?」
「GK、若島津君や若林君、森崎と同じだよ」
3人とも驚いた。
「え?女子が男子のサッカーのGKやってたのか?」
「うん、そうみたい…月那ちゃんが来たおかげでそのチーム、全国大会も優勝しちゃったんだよ?」
「……大会側の許可ももらってたのか…すごいな」
「うん…でもね…それで、男子の人気に火がついちゃってさ、月那ちゃん…女子からいじめられたみたい」
それは、かなり悪質なものだったらしい。
後ろからつきまとわれたり、サッカーの練習を妨害されたり、使い慣れたキーパーグローブをカッターで切られたり、
−そんな、ある日、月那が一歩も外に出なくなってしまったときがあったらしい。
それが、伊月の心の怒りを頂点に達した出来事でもあった。