都会の図書館
□初めてのキミ
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「岬君が事故にあったって本当ですか?!」
シャツとズボンという簡単な格好をしているもゆ
買い物を楽しんでいたら、翼から電話がかかり、今の状況にいたる。
「女の子が道路にいたのを助けようとしたらダンプカーがきて跳ねられたって」
「み…岬君は!?」
「大丈夫、軽傷ですんだって
女の子の方も大丈夫」
そういったら、もゆは胸をなで下ろした。
「あ…そういえば、岬君のお父さんは?」
「今、病室で話をしてる」
「…久しぶりの親子水入らずか…
羨ましいな」
もゆは、子供が親を待ちわびるような瞳で病室の奥を見ていた。
「もゆは、両親に会ったの?」
「……今は…イギリスにいる。手紙も電話もろくにくれなくってね…」
「……もゆ」
「ま、仕事が大変なんだから仕方ないけどね。翼もそうでしょ?お父さんが仕事中は会えないんだし」
「でも…でも」
翼は、もゆを苦しそうな顔で見ていた。
「でも、仕事が終われば、父さんは帰ってくる。一日だけでも話は出来る…でももゆは…一日でも話が出来ないじゃないか」
もゆは、口を開きかけた。
−−すると
「もゆちゃん」
「岬君の……お父さん」
話を終えたであろう岬の父親がもゆと翼の元に駆け寄る。
「いいんですか?岬君の傍にいなくて」
「そうしたかったんだが、もゆちゃんと話がしたいらしいから、席を外して呼んだんだ」
「……私と?」
それだけを聞いてもゆは、岬の居る病室へと足を向けた。
その場で2人になったのは、翼と岬の父親だった。
「…あの子は暴言がひどくなってきてないかい?」
「え?……普通だと思うんですけど」
「うん…もゆちゃん、今は心も体も疲れていると思う…だから」
翼をみて、一言
「彼女を、救ってあげなさい。男ならなおさら」
その言葉だけが、廊下をこだまさせた。