森と君と+呪いたち

□1:迷った木々のなか
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「実は80歳くらいだったり、するのか」

「さあ、どうでしょう? 私のことも、すべてのことも、いずれ、時がくれば、わかります」

フォルグはそう言うと、すっと手を引いた。

「この森には、あんまり、長居しない方が良いですよ。この場所は、汚いものを嫌います。悪いものを嫌っています。ここの空気は、時に記憶までもを汚いと見なし、浄化……場合によっては書き換えてしまうのです……あなたの、身近なかたのように」

にこ、と笑んだフォルグの言葉に、セイは、突然なぜだか、心臓を強く打たれたように感じた。
すっと、血が冷えていくようでもあった。

(あれ。そうだ、今、自分は何かを忘れている。大事な、何かを――)

思い出さねばならない気がしてきた。思い出せ、思い出せ。

「フレネザ!」

無意識に声が出ていた。
そうだ、自分は、彼女を探していたんだ。
忘れていたことが信じられない。どうして、こんなことを忘れていたんだろう。
「ほぉら。危ない危ない。もう、あなたも忘れかけている。彼女の元まで、案内しますから、早くお行きなさいな」

「ありがとう。きみは、親切ですね。なんだか、仲良くなれそう」

「あーら、感謝など、いりません。そして、利害が一致しない相手には仲良くしないのが、私の礼儀でポリシーですので」

「ぼくは、どちらなのでしょうか?」

「さあ。ご自分で考えなさいな」

ざくざく、短い草を踏みしめながら、更に奥へ奥へと歩く。時間が経っている感じがしていなかったのだが、気付くと、なんだか寒くなってきた。少しずつ、気温が下がっていたらしかった。
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