森と君と+呪いたち

□6:蒼い水を溶いた花
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「――変わった帽子ですね? お呼びになったので、出向いて差し上げましたよ」

貼り紙で溢れた掲示板のそばを通りかかった辺りで、彼女の名を、口に出したわけでもないのに、ふいに、そんな声が降ってきた。
セイが頭上を見上げると、黒くてふわふわした髪の少女が、昨日と変わらぬ服を着て、立っていた。
空中に、浮いている。

「……呼んでないのに」

むっとしたようにセイが言うと、フォルグはくすくす笑って、頭のなかで呼びましたよ、と言った。

「で、なんの用ですか?」
裾を気にしながらふわりと足をつけた彼女が訊ねた。


「聞きたいことが、あります」

セイは、前置きなく、まっすぐにそう言った。

「脱け殻、について、ですか?」

「はい」

彼女に対しては、なぜ知っているのかなどという疑問が浮かばない。違和感無く、そう察することが出来る人物と、自身が捉えているのだろうか。

「そうですね……まず、殻というのは、自身を外界と隔てるものです。大切なものを閉じ込めている、もの、脱け殻というのは――」

そのままの説明に過ぎないのに、セイにはその言葉が何か、意味があるように聞こえた。

「フレネザは……何かを、失った?」

「それは、少し違いますね、彼女自身が、脱け殻です。閉じ込めていた、何かを、放ったに過ぎません」
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