森と君と+呪いたち
□10:進む刻、刻む道
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──この国には、警察と呼ばれるものはない。
代わりの、治安維持会、という意味合いの名前の小さな組織はあるが、それくらいだ。地域のボランティアのようなものである。
院長と呼ばれたその男は院内の自室の中を彷徨きながら、焦っていた。
少年は見つかったという話を風の噂に聞いたのだが、居なくなった『少女』についての連絡は未だ無いのだ。
彼の目的には、どうしても今、彼女が必要だった。なのでこうして焦っている状態である。
彼はもともと気が弱く、流れに乗りやすく、そして他力本願な性質があるので、一応の《友人》である、髪を中分けにした男が、二人でこの町一番の権力者になろうと嘯いたときにも簡単に乗ってしまった。
──いや、彼なりには多少、疑ったものだったが、結果的にいえば、用心深い人物であれば、もう少し様子を見るべき段階の話で、彼は頷いたのだ。
彼の根底には、『この話に乗れば、あの男がなにかうまいことしてくれる』という、中身のない期待があり、リスクは《友人》が全部背負うだろうと、思い込み、頼りきってしまう弱さがある。