◆なとなと 番外編◆

□枠と境界線
2ページ/53ページ



『……ならいいけど──』
 ちょっとヒステリックになりかけていたのが、落ち着いたように、そいつ、佳ノ宮まつりは言った。
想像しただけでも、許せない部分なのかもしれない。習慣は、どこか強迫観念みたいになっている。


「……こっちも、それが、なんていうか……その……」

『わかった。さっぱりわかんないけど、止むを得ないなら』

口ごもっていただけだが、なにかを察してくれたのか、それだけ言って乱暴に通話を切られてしまう。ちなみに、この辺りに関しては、ぼくに対する、わざとだ。
公園の場所は知っているだろうし、ここで待っておくしかないだろう。
帰り道の途中だが、自宅からはそんなに遠くない。


「なんか……来てくれるんだってさ。だけど本当に」

「大丈夫大丈夫! 秘密は言わないから。厳守ばっちし! うんうん!」

今どき、あまり見ないタイプの(ぼくが興味がないからかもしれない)切るのに失敗したのかなと思いそうな、中途半端な前髪。
そして後ろがなぜかみつあみ。
──そして、このテンションのセリフ。ぼくと並ぶと違和感しかない。

 制服のスカートは膝くらいだったり、靴下も規定のものだったり、ところどころでは、真面目さ(?)が滲んでいる。

「……緊張してきた」

潤みがちの目で呟かれたが、ぼくはなんだか、帰りたい気分だった。人が怖いとかそういう話ではなく、こういう───空気感?
微妙に甘いような、それが、苦手だった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ