森と君と+呪いたち

□6:蒼い水を溶いた花
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なぜ、自分のことを知っているのか、セイは咄嗟に聞くことが出来なかった。

セイは、彼のことを何も知らない。生い立ちも、暮らしも、故郷も知らない。
改めて、知る思いがした。

あの場所に居たということは、それなりに極秘事項のはずで、母さんも、公言は避けていたはずなのだ。喋って罰せられたりはしないが、近所の目が変わるのはほとんど避けられない。
確か、セイもあのときは、外向けには『怪我』扱いだったようなのだ。
知っている、というのは不可解だ。

もしかしたら、彼は、最初からすべて知っていて、自分の知らない自分のことまで、知っているのではないか、と疑った。


(でも――だとしても、彼は、自分をどういう立ち位置で見ていたんだろう)

ふと、少し前の、冷たい瞳を思い出した。
悲しい目だった。

やがては、自分を殺さなかったことを、恨んでしまうのだろうか。彼のことだから、自らを責めるのかもしれない。

偉そうで、不器用で、しかし、とても優しい彼は、すぐに思い浮かべることができる。反対は、うまく想像できなかった。
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