森と君と+呪いたち

□1.呪いたち
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[耳の少年](1/16)
獣の森の呪いたち


□■□
     
 森の木のすぐそば、小さな神殿の跡で、三人は暮らしている。
ステンドグラスや祭壇のある場所から、さらに梯子で降りた地下に、テーブルや棚を持ち込んでいるのだ。

「──にしても、貴重なプラムが勿体ないよー!」


 窓の外、地面に落ちたプラムを見ながら、椅子に座るレンズが潤ませた瞳で、訴えた。安売りしている朝の市場で買った果物は、朝の糖分補給に欠かせない。
今日は買い物の際、いつもより1個多目におまけしてもらったのだが、それを誰が食べるかで、ランとレンズが朝から揉めていた。
……ちなみに買い出しに行ったのはヌーナである。

「あら、ごめんレンズ。私も、ちょっと味見してみたかったの。毒になってしまったけど……」

 触れたものを毒にしてしまう彼女の体質は、ある呪いによるものだ。ヌーナはそれに気付かずに水を汲んで、国中の花や木を枯らした過去がある。そして、その実を運悪く食べてしまった人も。

 禁断の森であった場所に、わざわざ出向いたのも、悔いて、自らを殺するためだったが……そこに住んでいたのは、少年が一匹。

『お前、おれの知ってるやつに似てるな、だから食わない』

なんて、木の上から物騒な台詞を投げるとともに、彼女のそばに降りたのだった。行き場のないヌーナは、『森の番』をしているという、彼と話すようになり、そんなある日にまた森に足を踏み入れたのが、彼女、レンズだ。


「そうなんだぁ。ごめんね、気付かなくて! ヌーナちゃん、今日はちゃんとお水飲んだ? 体が全部、蝕む毒に変わったら……」

「大丈夫。ちゃんと飲んでるわ。月とお日様に交互に当てた、清らかな水よ。私には、不味いけどね……」
「騙されんなよ、ヌーナは明らかに、毒をこっちに投げ」

つい、ランが呟いた言葉をヌーナがにこやかに笑って制止する。光輝く爪が、一瞬、明らかに彼の眼球を向いていたと思う。
……恐ろしい。
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