籠の中の蛇

□三夜
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少女(後から名前を聞いたら、テルーというらしい)から衝撃的な言葉を聞いて、しばらく呆然としていると、突然テルーからあたしの家においでよ!と言い出したので、さすがに不味いと思って丁寧に断った。
…のだが、何度かそのやりくりをしていて、終いには駄々をこねだしたテルーに押し負けて、今現在、にこにこと笑いながらやや斜め前に歩くテルーについていきながら、彼女の家に向かっている。


「それでね、王さまがこの国の人たちを他の国に連れていったんだ。」


その時にあたしのお母さんとお父さんも連れていかれちゃって…。
そこまで話すとてルーは先程とは違って暗い表情になって下を向いた。
そこまで聞いた私はというと、腸が煮えくりかえる思いに駆られていた。
漫画で知ってはいたが、実際に聞いてこの国の現状を知って本当にひどいと思った。
この国の民を奴隷として他国に売り、自分や貴族だけ利益を持つ…考えただけでも吐き気がでる。
そうやって、売られた人の中には殺しといった暗殺に手を染めてしまう人たちもいるのだろう………私のように。


「お姉さん?どうしたの、首がいたいの?」
「…っ!何でもない。大丈夫。」


テルーの言葉にハッと意識が浮上した。
どうやら考えしすぎて、無意識に首に手を添えてしまったらしい。
そのことに内心まだ立ち直れてないのかとため息をついて、いつか絶対あの丸っちい豚(アブマド)を血祭りにあげてやろうと心に密かに誓い、いまだ不安そうにこちらを見つめるテルーを安心させるように頭を撫でてやった。
それでテルーは安心したのか、話をつづけた。


「それでね、今はカシム兄ちゃんがいる”霧の団”ていうところで暮らしているの!」





・・・ん?




話を聞いていていくつかの単語につまってテルーの方へ視線を向ける。
テルーは視線に気づかずに笑いながら話を続けている。


「カシム兄ちゃんとアリババ兄ちゃんはすごいんだ!毎晩何人かの人たちと出かけて行ったかとおもえば、沢山の食べ物やキラキラしたものいっぱい持ってきてくれるんだ!」


自慢するように誇り高くカシムとアリババのはなしをするテルー。
そうか、食べ物ちゃんと食べているのかよかったなぁ






・・・・・・っじゃない!!


テルーは霧の団の拠点に住んでいる。
てことは、今向かっているところは…霧の団。


(絶対に不味いだろ…かわいい少女がこんな怪しい人物連れてくるとか…最悪殺されたり…?)


うん、まずい。非常にまずい。
テルーをなんとか説得してかえr「ついたよお姉さん!!」



・・・まじかぁ・・・

目の前を見れば片手を高く上げて目の前の建物を指さすテルーと周りの風景に隠れるようにそびえ立つ建物。
どうやらここが霧の団の拠点らしい。
ほけっと見ていると中から人がでてきた。


「テルー!!お前どこに行ってたんだよ!!」

「アリババ兄ちゃん!」


鬼ごっこの途中でいなくなりやがって、心配したんだぞ!…と言ってこちらに近づいてくるのは漫画に出てくるキャラで重要なキャラのアリババでした。
アリババはテルーに駆け寄り、彼女の頭をなでているとこちらに気づいたらしく、さっきまでの穏やかな表情はどこへやら、警戒心丸出しの表情でこちらを睨んできた。


「誰だてめぇ。」



・・・え、何これフラグ立っちゃった?


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