漆黒の風

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「ようこそ!よくきたね!」



「シンドリアへようこそ!!」





(ここが、シンドリア…)



長い船旅を終えてやっと地に足を踏み入れた私。
片手には少女、もう片手には荷物を持って、シンドリアの道を進む。



「姉さん早くー!」



「次はどこいくのー?」



先の方で急かす二人の少年達を私は注意し、辺りを怪しまれない程度に見渡す。
辺りは市場(バザール)で賑わっていて、どの人たちも輝いて見える。



(いい国なんだな…)



そう思いながら今日泊まるホテルへと私たちは向かった。




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シンドリア国国王シンドバット暗殺


これが今回課された命令であり依頼である。
シンドバットと言えばかの有名な七海の覇王その人のことで、とてもじゃ言えないが暗殺なんて成功するわけない。絶対に。


それでもやらなければいけない。
でなければ使えないものとして廃棄される。
私の入っている暗殺集団の組織はそういうしくみなのだ。
どんな任務でも請け負い、失敗すれば廃棄、代わりなんていくらでもいるから使えなくなれば死あるのみ。




別に死が怖いと言うこともないし、殺すことも戸惑わない。
普通の人ならおかしいとか思うだろうけど、私にとってはそれが普通として生まれてから生きてきた。


ただ、心配なことは子供たちのこと。

私の入っている暗殺組織は一人前の暗殺者につき数人の子どもを持つことになっており、暗殺者はその子どもに暗殺の手段や知識を子どもたちに植え付ける。
そうすることで、たとえその暗殺者が死んでも代わりに子どもたちが新たな暗殺者として生きることになる。


けれど、私は未だに彼らに暗殺の知識は教えておらず、最低限の攻撃や防御しか教えていない。
しかも、毎回任務先に子どもたちと行き、最悪、自分が死んだとしても里親が子どもたちを賄ってくれるようにしてある。
普通なら暗殺組織にとってこれは非常識だ。


それでも、何故かこの子たちは私のように染まってはいけない気がした。
だから今回もこうやって子どもたちを引き連れてシンドリアへかたわけである。




「いい?私が帰って来るまで大人しくしててね。勝手にこの部屋以外は出ないこと。」




「わかったよ姉さん!」



「いってらっしゃい」



「分かったよ。じゃあお仕事に行ってくるね」


子どもたちに外へは出るなと約束ごとのように教えて、窓のある方へ向かう。
シンドリアへ来たときの服とは違い、全身黒装束の動きやすさ重視でつくった服に身を包み、仕事を遂行するべく窓から外へと飛び降りた。



目指すはシンドリアの宮殿…この国の王、シンドバットのいる部屋へ。




さあ、始めようじゃないか…ーーー



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