十鬼の絆
□☆支配欲
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ある晩―…。
皆が寝静まったころ、一つの影が入り口に向かって歩いてた。
「もうそろそろ潮時か…」
―半年間も待ったのだ。
そう自分に言い聞かせて扉へと手をかける。
楽しくなかった、といえば嘘になる。確かに、一時は"復讐"というのを忘れる時もあった。
このまま、自らの正体を明かさず、ただのはぐれ鬼を演じれば…。
そう悩む日も多々あった。
けれど、彼―千鬼丸の本来の目的は八瀬姫と十鬼衆への復讐。
この目的を外していまえば何のために鬼の道を更に違えてまで覚悟したのか、その覚悟さえ無駄になるのだ。
今日を境に、"千鬼丸"は消える。
覚悟を決めて一歩を踏み出す。
すると…
ピンッと張った何かに足が引っかかった。
その直後、頭に浮かんだのは朧一族である八千代が武器として使う糸だった。
八千代が迎えにきて何かを企んでいたのかと思い内心毒をついていると、その糸の色に違和感を覚えた。
八千代が使用するのは黒い糸。だが、自らの足に巻き付いていたのは銀色の糸だった。
「関心しませんね、こんな時間に1人で外へ出ようとするなんて」
笑いを含んだ声に振り向くと、秦が暗闇の中から姿を現す。
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