ダイヤのA

□七話
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「すみません、遅れましたー。」

「おっせえ!」

「いてっ!!」


遅れてグラウンドに入ると後ろに隠れていた
純さんに素振りの棒でけつを叩かれた。
いてえ・・・この人加減ってもの知らねえよ絶対・・・。


「なんかあったの?」


亮介さんに言われ目を丸くした後笑みを浮かべる。


「いや、忘れ物をしたのが教科書だったんで
 おき勉だと勘違いされて先生にこっぴどく怒られてたんすよ。」

「へードンマイだね。」


クスと笑う亮介さん。
いや、これバレてる可能性高いな。あとで俺殺される。


心の中で泣いた後にグローブを取りに行くと倉持と沢村がいた。


「なにしてんだ、お前ら。」

「おっ戻ってきたか。」

「おっせえよ!
 アンタがいないから倉持先輩に捕まってたんだよ!!」

「ははっわりぃわりぃ」


そう言って自分のグローブをつかむ。
そそくさと倉持が俺に近寄ってきた。


「なんかあったか?」

「は?」


倉持の言葉に目を丸くする。


「なーんか嬉しそうだけど、せつない顔してるぜ?
 ひゃはっ真月となんかあったんだろ!」

「なにぃ!?
 真月先輩になんかしたのかアンタ!!」

「ちょ、お前らうるさ・・・」


後ろを振り向くとじっと皆がこちらを見ていた。
あぁああぁああ・・・


「なっわけねーだろ!
 真月は部活だし、会う訳ねえじゃん!」

「それもそうか・・・」


俺がそう言うと空気がほっとしていた。
おい、なんでみんなしてほっとしてんだよ。
惚れるなよ、おい。


「いいから早く練習しろよ、お前ら。」


そう言って俺はグローブを片手にグラウンドに向かう。
にしても、倉持も良く見てるよな・・・

確かに今の自分は嬉しいけど、せつない気持ちもあった。
そして―――


(アイツの辛さに気付かなかった俺が腹立たしい…)


怒りさえも覚えていた。










『ごめん、御幸。』
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