ダイヤのA

□六話
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よし、今日も頑張っていきますかー。
特に部活は・・・最近ハードだし。

ふぅと溜息をひとつつき自分の手を見つめる。
投球のスピードは増した。
コントロールは元からなんとかできている。

あとは――


「力、か。」


ぐっと拳を作った。

あとは相手に持ってかれない力が重要だ。
どんな早いスピードでも力で流されれば遠くへ飛んでしまう。

だからこそ、力を強くしなければならない。


ーでも、どうやってやるんだろう・・・


うぅむと唸りながら郵便受けを開くと、そこには一通の手紙があった。
驚きつつ、それを取り出し送り主の名前を読む。


「っ!!」


ドサッと音が響いた。
部活のエナメルカバンがコンクリートにぶつかる音。

その手紙を見て真月は硬直した。
送り主は――


「か、あさん・・・。」


自分を捨てた実の母親からだった。


くしゃりと紙を握り、自分のエナメルカバンに入れて
何も無かったかのように学校へと走り出した。


(なんで・・・)


心臓の音が早まる。


(なんで今頃・・・!!)


この現実を嘘だと誰かにいって欲しかった。
















「おはよう、真月!」


片手を上げて朱莉は挨拶をした。
ついでに朱莉は隣のクラスだ。


「おはよう、朱莉。」


いつも通りを装って笑顔を向ける。


「ねえ、聞いた?
 先生今日急に出張になっちゃって部活3日間オフだって。」

「え・・・。」

「あ、やっぱ聞いてないか。
 先輩が言ってたんだー。」

(そんな・・・)


忘れたくて部活に集中しようと思ってたのに、部活がナシと来た。
それに内心動揺していると後ろの席の御幸が来た。


「あ、おはよう御幸くん。」

「おはよう朱莉ちゃんと真月ちゃん。」

「あ、おはよ…。」


慌てて挨拶を返す。
それと同時にチャイムが鳴った。


「やべっ一時間目から英語じゃん!
 またね、真月!」

「あ、うん。」


そう言って朱莉は自分の教室へと向かった。
その後ろ姿を見つめながら真月はぎゅっと拳に力を込めた。


(・・・・・真月・・・?)
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