ダイヤのA

□六話
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一時間目の数学が始まる。
黒板に書かれているのは数式だけ。

どれも簡単な物ですぐに解けた。

でも、今はまだほどけないモノがある。
あの手紙だ。


ー一体、なんて書いてあるんだろう。


家に戻ってくる?
それともあの男とわかれた?
または再婚することになった・・・

全ての考えに頭を横に振る。


ーあの人がそんなことをする訳ない。
 だって・・・


シャーペンを握る手に力が入る。


ーアタシを・・・実の子供を捨てて男との暮らししか考えてない人なんだから・・・


そんなことを考えていると目頭が熱くなった。
涙なんて流すわけにはいかない。

ぐっと堪えて授業に集中した。
いつもよりも、たくさん集中力をそぎこんで。














「わりぃ真月!
 ノート貸してくんね?」


両手を合わせて現れたのは倉持だった。


「・・・・・なんで?」

「寝てた!」

「・・・はあ。」

「ひゃはっ!」


ーひゃはっじゃねえよ…


溜息をつつノートを差し出す。


「間違ってる部分あるけど・・・ちゃんとメモで大事なとこかいてるから
 そこ重点的に見てねー。」

「サンキュー!」


そう言って倉持は自分の席に向かった。
今から書くらしい。

あの様子だと次の時間も授業を聞かないでノートを書くのだろう。


「ねえ、真月ちゃん。」

「ん、なに?」


急に御幸に呼ばれ振り向く。
口元を周りに見られないよう右手でノートを持ち、口元に寄せていた。


「なんかあった?」

「・・・・・え?」


御幸にそんなことを言われ目を丸くする。
なんで・・・


「なんもないけど・・・」

「・・・ほんとか?」

「うん。」


頷くと御幸は「ふーん」と疑った様子だった。
逃げ場を軽く失っていた真月を助けてくれたのは次の授業開始を告げるチャイムだった。
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