ダイヤのA

□六話
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学校の授業も終わり、エナメルカバンを肩にかける。


「今日も部活?」

「うん、毎日あったしね。
 それに明日から二日間オフなんだ。」

「へーそうなんだ。」


御幸の言葉に嘘を言う。
本当はダメだけど・・・いたしかたない。


「最近ハードだからね。
 じゃあ、また明日!」


そう言ってアタシはグラウンドに向かうふりをして階段の下に隠れた。
ここは覗かないと見えない場所だ。

さっき教室には倉持と御幸とその他クラスメイトが数名だった。
足音を聞けば数がわかる。

数えているうちに倉持の声が聞こえた。


「で、一年生のあの二人はどうよ。」

「まあ、ボチボチだな。」

「へー。」


ドキッとした。
倉持と御幸。

多分この二人が最後だろう。


「アイツらはもう少しそれぞれの欠点を補えばもっと良い球が投げれる。
 だからまずはそこからかな。」

「ひゃはっくじけねーと良いな!」

「まあな、大丈夫だろ。
 ちゃんと引っ張り出してやるよ。」


そんな二人の会話を聞いてアタシは自分の教室へと向かった。
もちろん誰も教室にはいない。

こっそりと自分の席に座り心を落ち着かせる。
こういう時に焦ったり動揺していると頭になにも入らないし
なにも学ぶことができないからだ。


はぁと長く大きな息を吐いた後、手紙を開く。
そこには見間違えようのない母親の字が連なっていた。



『元気にしていますか。ちゃんとご飯食べてる?

 いきなりだけど、お母さん今の夫と話をして
 貴女を私達の家に連れようかなと思ってるの。
 お金とかも大変だろうし、それにこっちに来た方が安定してると思うの。

 部活で怪我することも多いだろうし、不安なことが増えると思うし・・・
 この際四国に来たらどうかしら?やっぱりお母さんも貴女の事が心配です。


 良い返事をお待ちしています。』



読み終わると同時に手紙をぐしゃぐしゃに丸めた。
なんだよ…なんだよ、これ・・・


「今更・・・何さ・・・!」


不安があるだろうし、心配?
じゃあなんで・・・


「なんで・・・アタシを置いて男のとこに行ったのよ…!」


そんなことを口に出すと同時に涙がこぼれた。
誰もいない教室に自分の声だけがぽつりと残っていた。


「自分勝手にもほどがあるでしょ・・・!」


涙がポタポタと机に落ちた時だった。


ガラッ


「!」


急にドアが開く。
廊下には誰もいなかった。
みんな部活に行ったり、帰ったりしてる時間帯だ。
なのに、そこにいたのは―――


「み、ゆき・・・?」

「・・・・・。」


御幸だった。
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