ダイヤのA

□六話
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忘れものをしてとりに戻ると教室に誰かがいた。
もちろん席ですぐにわかる。


「・・・真月ちゃん?」


小さく呟いてよく見ると真月は涙を流していた。
そして震える声。


「なんで・・・アタシを置いて男のとこに行ったのよ…!」

「!」


その言葉と同時に涙があふれていた。


「自分勝手にもほどがあるでしょ・・・!」


ぎゅっと手に力が入っているのに気付いた。
なんでもないって言っていたが、アレは精いっぱいの強がりだったことに気付いた。

少し気になっていたが、もうみていられなかった。

勢いよくドアを開けると案の定驚いた顔でこちらを見る真月。


「み、ゆき・・・?」

「・・・・・。」


俺はその時、初めて見る真月の顔に何も言えなかった。













「なんで、ここに。」

「部活は?」


その言葉に自分の胸が締め付けられる。


「今日は、なしになった・・・。」

「そっか。」


そう言って御幸はアタシの前に来た。
後ずさりをするも後ろが窓でもうさがれない。


「真月ちゃん。」

「っ」


何かが怖くて目をつぶった。
っと、同時に温かさを感じた。

ゆっくりと目を開ければ野球部特有の練習着で、うっすらと御幸の匂いがした。
そこで気付く、御幸に抱きしめられてる事に。


「な、はな「・・・なよ。」え?」


きょとんとして御幸を見つめると


「我慢すんなよ、辛いなら言えよ。
 ・・・その時はちゃんと胸貸してやるから。」


すごく辛そうな顔で笑いながらもアタシを見つめていた。


「御幸・・・?」

「まあ、絶対ってわけじゃねえけど…
 俺じゃ意味ないときもあるだろうし・・・でも、俺でよければ貸してやるよ。"約束"。」


その言葉に自然に涙が大量に溢れる。


「破らない・・・?」

「おう。」

「そ、っか・・・。」


こつんっと御幸の胸におでこを当てる。


「ごめん、胸、借りる・・・」

「おう、どーぞ。」


そう言って御幸はポンポンとアタシの頭を撫でる。
初めて、人の前で泣いた。
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