ダイヤのA

□十三話
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「はい、残り十球―!!」

「っういっす!!」


汗を拭う真月を見て御幸はポツリとつぶやいた。


「ノリ…お前一日で600とか投げれるか?」

「600!!?
 む、無理に決まってるだろ!肩壊す!!」

「だよな…はあ。」


ため息をつきつつも小さく笑う御幸。
その表情に川上は少し突っかかっていた。


「御幸?」

「…ははっ全く…ラスボスは我慢強いぜ。」

「は?」

「俺たちも走りに行くぞー。」


そう言うと御幸は川上の前を歩き出す。
川上も慌てて後を追った。


「ラストー!!」

「っ…どぉらぁあああ!!」


ドパァァンッ


「いっ…ナイスボールです、ピッチャー様。」

「しゃぁ!!
 ってピッチャー様ってなんだよ…。」


げんなりして言うと朱莉はけらけらと笑っていた。


「今日は徐々に球の重さが上がってた。
 その代わりコントロールが鈍ってたけどね。」

「うっ…」

「あとはスピードだなあー」


物足りない顔をして真月を見る朱莉。
右頬をかきながら真月は返されたボールを見つめた。


「スピード、ねえ…」


―確か降谷くんがそうだよな。
 剛速球。


ふと降谷の姿を思い浮かべる。
が、ピッチャーは野球のピッチャーとは投げ方が違うためあまり役には立たなかった。


「と、なったらコントロールかあ…」


うーんと唸ると朱莉はふと笑った。


「何も固く考えなくても良い。
 それこそが自分を縛って良い球を投げれなくするんだよ?
 だから、気楽に、いつも通り仲間を信頼して投げれば良い。」

「・・・・・。」

「ね?」


にこっと大人っぽく笑う朱莉にタオルを投げつける。
ずるりと滑って朱莉が頬に怒りマークを浮かべていた。


「んなもん言われなくてもわかってるっちゅーの!!」

「あっそうですか!!」


そう言って取っ組み合う二人。
でも、二人は笑っていた。


「アタシたちが」

「チームを優勝へ導く!!」


そう決意して二人はニカッと笑った。
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