お前なんか嫌いだ

□愛しい貴方へ
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アーサー


今日は、こっちはどしゃ降りだよ

お前が俺の前から居なくなった日と同じだね
胸くそ悪いよ

濡れた土の匂いは好きだよ?
雨の音も、湿気も嫌いじゃない

でも、雨はお前を思い出すんだ



おかげで庭の手入れができないよ
仕方ないから、刺繍したよ

お前が教えてくれるっていってたやつ
途中までできたけど、後が思い出せない
帰ってきたら教えてくれよ?


そのあとは、お昼を食べた

いつものように、二人分用意して

でも、いつものように、一人分しか無くならない

それで、いつものように、もう一人分は捨てたよ



そのあとは、何故か悲しくなって

どしゃ降りのなか、コートも着ず、もちろん傘も持たずに飛び出したんだ

お前が歩いていった方に走ったよ


ずっと


ずっと


ずっと走った

お前が見つかるかもしれない、なんて

あるはずもない希望を抱いて


辿り着いたのは浜辺
お前がいるかもしれない

でも、当たり前に、そんな希望は砕けちって




泣き叫んだ


浜辺に膝をついて


哀しみに満ちた雨雲に向かって






『寂しい』



『痛い』



『帰ってきて』




雨雲は、受け止めてくれた

でも、お前に届けてはくれなかった





アーサー

アーサー

アーサー

お前で頭がいっぱいだ


俺がこんなことしてたら

腹減ったぐらい言って帰ってきそうだ

お前がみえないのに、言葉だけ聞こえるんだ


愛しい

愛してる

俺は、愛を与えるために
お前に愛を与えるために生きてきた

この口は、神様がお前に愛を囁けるよう

この目は、神様がお前を見つめられるよう

この腕は、神様がお前を抱き締められるように、与えてくれたんだ


お前を愛すだけにうまれたのに




アーサー、どこへいったんだ?


早く、帰ってきて




俺は、愛を溜め込めないんだ


もう自分の愛で壊れそうなんだ



受け取ってよ



この


哀しみで縛られたピエロを







助けて

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