お前なんか嫌いだ

□麗しき君
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外はバケツをひっくり返したような豪雨
庭の薔薇も、今日は散ってしまうか、残念だ

それに比べて、室内は驚くほど穏やかで、恋人の焼いたマフィンの甘い香りが漂っている
そして、久々にあった恋人は今は目の前のソファでくつろいでいる

フランシス、お前は美しい
しゃくだが、ここは曲げようがないと俺も思う


深いブルーの瞳は、少し垂れていて優しい雰囲気だ
高い鼻と綺麗な形の眉毛
口元はだいぶだらしなくてすぐに緩む
だがそれが彼の優しい雰囲気の正体だったりもする
あと、髭
これは、少しいただけない気もする
基本が綺麗で可愛いばっかりに髭がミスマッチな感じだ
まあそれでもかっこいいのだが
そういえば、うでまくりしてキッチンに立つフランシスには髭があうな
あ、近くで見るのもあう
じゃあ髭は似合ってるってことなのだろうか


「なあに坊っちゃん?そんなに見つめないでよ」


「お兄さんに穴が開いちゃう」とかいって笑う恋人
本当に穴を開けてやろうか


「坊っちゃん?」


近づいてくるフランシス
愛しい恋人は、俺の前にしゃがみこんで名前をよんだ


「アーサー」


そして、綺麗な白い手で俺の頬を撫でる
優しい目に見つめられて、少し体が熱くなった
暖かい、触られている部分からなんとも言えない快感のようなものが伝わる


「どうしたの?」


別に、どうもしてないが
ただお前のことを考えてるだけだ
フランシスが心配そうにのぞきこんでくると目の前の金髪が揺れる


「何かあったの?」


別に、なにもないが
ただお前のことを見てるだけだ
言葉を発することをしない俺を大きい体が包み込む
だから俺も手を背中にまわした


「寂しいの?」


寂しい、そうかもしれない
しばらく会ってなかったし、ずっとお前のことを考えていた
会いたかった
正直フランシスに一秒でも早く触れたかった
今も、全然足りてない


「…アーサー、お兄さんも寂しい」


そうか、お前もか
じゃあちょうどいいな、俺もお前も足りないなら


「もっと欲しいな」


俺も
フランシスの唇と俺のが重なる
でもバードキスなんて、そんなんじゃ嫌だ
もっと深くしたい
お前もそうだろ?


「…っ…」


痛いか?
だって、舌を絡めとるだけじゃつまんない
噛みついたっていいだろ?
ほら、この味、鉄臭い
でも、深くて満たされる


「…アーサー、愛してる」


知ってる
お前が俺を愛してるのはわかってるんだ
それがどれだけ重いのか、教えてくれよ
フランシスが強く抱き締めてくる
体がバキバキ音を立てる
痛い
だからフランシスを強く抱き締め返してやる
暖かい、落ち着く
苦しいのにこんなに穏やかで気持ちいい


「…」


静かだ
聞こえるのは雨の音と二人の心臓の音、そして荒い息だけだ

フランシス、お前は俺をおかしくした
こんなに寂しかったことはない
そして、こんなに幸せなこともなかった

お前は美しすぎる
どうしてそんなに綺麗なんだ

俺は、もう戻れないくらいに入れ込んだ



麗しき君よ、どうか、俺と一緒に…

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