20000打

□Events of the Rainy season
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シトシト

ジメ…




「ぬぅ…」



また、今日も雨か…


ギリシアでは梅雨に入った。
ここ約一週間、ずっと雨が降り続いている。

雨は嫌いではないが、こうも降られるとな…。



『うーん…かの〜ん…』

「名無しさん。

寝ぼけたフリをして腰を撫で回すのは止めろ」

『チッ。
いいじゃんか、そーゆー関係なんだからさぁ』

「止 め ろ 。
ただでさえジメジメして鬱陶しいのに、これ以上引っ付かれたらウザくて堪らん」

『それ彼女に言うセリフかコノヤロウ。
泣いちゃうよ?
そんな酷い事言うなら泣いちゃうよ?』

「そう言いながら、なお腰を撫で回すお前に俺が泣けてきそうだ」



むくりと起き上がり、ボッサボサの頭をガシガシ掻く目の前の女。

名は名無しさん、一応俺の女である。
サガが教皇を継ぎ、俺が双子座を継いだと同時に双児宮に来た女官だ。

第一印象は"変な女"一卓だった。

いや、これは誰だって思うはずだ。
全財産賭けてもいい。


【ところで、その素敵な筋肉を堪能させて頂きたいので今すぐ私とGo to bedしませんか】


挨拶後の第一声がこれだ。
思わずフリーズしてしまった。

はたして、こんな奴が女官でいいのだろうか?
よく採用されたな。


それからは、コイツのセクハラをかわす日々。
慣れてしまった己が嫌だ。



『かのーん、構ってくれよぅ』

「引っ付くな鬱陶しい」

『んもー、相変わらずツンデレなんだから!
そんなとこも ス・キv』

「キモイ。
そして、俺はツンデレではないと何度言えばお前のその足りない脳は理解するのだ」

『カノンの声が聞けるなら何度でも!』

「馬鹿」

『そんな馬鹿を好きなのはどこの誰ですかー?』

「知らん」



ニヤニヤ顔がなんとなく腹が立ったので、ほんの少し小宇宙を込めてデコピンをしてやった。
ふん、そのままもがいているがいい。

意地でも言ってやるものか。



『ぬおぉ、愛が痛い…!

仕方ない、お腹空いたからご飯作りに行こっと』

「ちょっと待て」

『何?
あ、もしかして朝から?
しっかたないなぁ、喜んでそのお誘いを…』

「黙れ。

お前、そのままの格好でいくつもりか」

『え、駄目?』



いかん、頭痛がしてきた。

いくら朝早い時間といえ、パン一で宮を歩き回る馬鹿が何処にいる。



『ここにいる』

「ドヤるな心を読むな。
せめて何か羽織れ」

『カノン、人類は元をたどれば皆裸族だよ』

「屁理屈を言うな」

『ちぇっ、カノンのケチ』



渋々シャツを着て、名無しさんは部屋を出ていった。

色気もへったくれもない、こんなガサツな女に何故惚れてしまったのか。

人生は分からないものだ。



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