短編

□隣の柳
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ふと窓の外を見ると、
空が曇っていた。

朝、家を出る時は
晴れていたから
傘を持って来てない。

折り畳み傘あったかな?

家に着くまで
降らないといいな。

「佐藤。
授業に集中しなくて、いいのか?」

テスト前に泣きついて来ても
教えないぞ。

と、言われてしまった。

でもさ、柳さんよー
私的には助動詞の活用より、
天気の方が大事なんだもの。

「雨、降らないかな?」

「今日は、15時から雨だ」

「確率は?」

「80%だ」

そんなに、高いのか…

「なんだ、知らなかったのか?」

「うん。
傘ないから降られると困る」

天気予報ってよく外れると
私は、思ってる。

今日は外れますように!

「残念だが、今日は雨だ」

「絶対?」

そう言いながら、
口に人差し指を当てて
首をかしげて聞いた。

「絶対」

柳は、私と同じポーズで
首をかしげずに頷いた。

「くそう、可愛いなあオイ」

「心の声が出ているぞ」

しまった、つい。

でも、本当に可愛かった。

「に、しても雨か…」

「俺の折り畳み傘を、
貸してやろう」

「本当?ありがと」

「風邪でも引いて休まれたら
困るからな」

え?
それって…

「私が居ないと寂しいとか?」

そう言うと、
小馬鹿にしたように笑われた。

「そんなわけ、ないですよねー」

「当たり前だ」

だが、
と付け足すように
話を続ける。

「お前が居ないと
ストレスが溜まる」

「それって……私で
ストレス発散してるってこと?」

ふっと笑って
柳は視線を黒板に戻した。


「休んでやる…」

と、ふいに口から出た言葉は
柳の耳に
届いたらしく

「そんなこと、していいとでも?」

と、こちらをチラリと見て
開眼して言った。

怖いよ柳。



【隣の柳。】
放課後を、迎える頃には
本降りになっていた雨。
お言葉に甘えて、結局
傘を借りて帰った。


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