短編
□愛の告白
1ページ/2ページ
譲が、私を見てないのなんて最初から知っていた。
「名無し、まだ先輩は起きてないのか?」
いつもそう。貴方の一番はいつだって望美ちゃん。
「望美ちゃんなら、九郎さんと朝稽古するって」
「そうか。こっちの世界だと、先輩は早起きみたいだな」
酷い人。私が目の前に居ても、する話は望美ちゃんの話ばかり。
「じゃあ私、景時さんに用事があるから…」
「景時さんなら、庭で洗濯の支度してたぞ」
「ありがとう」
すっと譲の横をすり抜けて庭に向かう。譲が、望美ちゃんの為に植えた花たちが咲きそろった庭へ。
「………」
源氏と平家が和平を結んで数ヶ月。年を越え、春が来た。
京も怨霊の脅威が減り、そろそろ現代へ帰れるだろう。
「かっげとっきさん!」
「あれ〜?どしたの、名無しちゃん。望美ちゃんや九郎と稽古に行ったのかと思ったのに」
「景時さんにお願いがあって」
この世界に来てから開花した私の陰陽術の才能。
「何かな?俺で力になれること?」
「陰陽術の事で少し、聴きたいことがあって」
最後くらい、憎らしい演出の一つもしてやったって罰は当たらないでしょう?