短編
□愛の告白
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そして現代に帰る前日の夜。私は譲の部屋の前に立った。
「ゆずる」
「何だよ、こんな遅い時間に…。明日は早いんだぞ?」
「あのね、私、譲が大好きだったの」
「はっ?」
驚いた顔の譲を見つめながら、笑った。
「望美ちゃんが大好きで、望美ちゃんしか見てない譲は、私のことなんて気にしてなかっただろうけど、私はずっと、譲が大好きで仕方なかった」
「ちょっ、どうしたんだよ、名無し」
「いつだって、譲の力になりたかった。譲のために出来ることはなんでもした。……けど、やっぱり譲は、望美ちゃんしか見てないんだね」
戸惑う譲に反論の隙も与えずに言葉を続けて。
「…私ね、こっちに残る」
「なっ…」
「望美ちゃんにはもう言ってあるの。だから、明日帰るのは2人だけだよ」
将臣くんもこっちに残るみたいだし。そう続ければ呆れた顔もしたけど、やっぱり表情は困惑していて、私は妙にすっきりしていた。
「ゆずる」
「…なんだよ」
「好きなの」
「さっきも聞いたぞ、それ」
「…返事は?」
「……俺は、お前のこと嫌いじゃないけど、そういう好きでは、見たことがない。…多分、これからも」
「………知ってたよ」
これで迷いは吹っ切れた。
「これあげる。じゃあね、譲。おやすみ」
譲の手に持ってきていた花を握らせ、私は部屋に戻った。
泣いたりしない。不細工な顔で2人を送りたくない。
「…譲、気づいたかな……」
押しつけた、陰陽術で作った花。明日の朝には消えてしまうけど。
赤いチューリップ。花言葉は愛の告白。
私がこの世界に残ることで、貴方の記憶から私は消えない。どんなに幸せな記憶を築こうと、どんなに年月が経とうと、赤いチューリップを見る度思い出せばいい。
「最高の、告白でしょう?」
赤いチューリップを添えて
(最高に最悪な告白だわ)
title by Aコース