短編

□し あ わ せ
2ページ/4ページ




 「好き」



 「うん?」



 「好きよ、龍馬」



 ふわふわとした焦げ茶の髪に指を絡め、蜂蜜色の瞳を覗きこむ。



 「な、なんだ?急に…」



 「……なんとなく?」



 「なんだそりゃ…」



 呆れたように首を竦めながら、それでも龍馬は笑ってくれる。



 「言わなくちゃ、かなぁ?って、思ったの」



 龍馬と出逢ったあの日から、龍馬は私の全てだ。総てを無くした私には、今、龍馬しかない。



 「伝えられる相手がいるのは、とても、素敵なことよ」



 「…そう、だな」



 龍馬には、忘れられないでいる人がいる。昔に出逢った、運命を決定づけてくれた大切な人だという。



 それでも私は、構わない。



 「好きよ、龍馬」





  【愛を伝えられる相手がいること】
 (こんな私でも、まだ誰かを愛せるの)

 
title by:Aコース


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ