短編
□し あ わ せ
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「好き」
「うん?」
「好きよ、龍馬」
ふわふわとした焦げ茶の髪に指を絡め、蜂蜜色の瞳を覗きこむ。
「な、なんだ?急に…」
「……なんとなく?」
「なんだそりゃ…」
呆れたように首を竦めながら、それでも龍馬は笑ってくれる。
「言わなくちゃ、かなぁ?って、思ったの」
龍馬と出逢ったあの日から、龍馬は私の全てだ。総てを無くした私には、今、龍馬しかない。
「伝えられる相手がいるのは、とても、素敵なことよ」
「…そう、だな」
龍馬には、忘れられないでいる人がいる。昔に出逢った、運命を決定づけてくれた大切な人だという。
それでも私は、構わない。
「好きよ、龍馬」
【愛を伝えられる相手がいること】
(こんな私でも、まだ誰かを愛せるの)
title by:Aコース