薄桜鬼(長編)
□プロローグ
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その日は月の綺麗な夜だった。
風に吹かれて散る桜の花びらはまるで雪のようだった。
そんな風景を見ている少女が一人。
「・・・。」
少女は完全に見入っていた。
後ろから近づいてくる気配にも気付かないくらいに・・・。
「―様。」
「・・・。」
「千沙様。」
「・・・。」
「千沙様っ!!」
「わぁっ!!びっくりした・・・。」
突然目の前に現れた彼女に千沙と呼ばれた少女は目を見開いて後ろに飛びのいた。
「3回もお呼びしたのに。」
「あー、ごめん。それで何?」
「ご当主がお呼びです。」
「母様が?分かった、今行く。」
##NAME##はある部屋の来た。
ガラッ
「お呼びですか?母様。」
「ええ、座って。」
「何かあったの?」
「これをあなたに授けます。」
そして千沙は差し出されたそれを見て目を見開いた。
「でもこれは…。母様の…、当主が持つべきものです!!」
「そうよ。だから千沙に“黒覇”を授けるの。」
「私はまだ当主になんてなれません!だから―」
「黙りなさい。」
静かに、でもそれ以上はなすのを許さないというよう低く冷たい声が千沙を制した。
「今から話すことはとても大切なことだからしっかりと聞くのよ。」
そして母はゆっくり語り始めた。
千沙たち小瀧家の話を…。