薄桜鬼(長編)

□一族の使命
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私たち小瀧家は代々ある鬼の一族に仕えていたの。

それは東の鬼たちを総ていた雪村家。

雪村家の方は皆とても優しかった。

従属である私たちを同じ一族のように扱ってくれた。


だけど、あの日が…。



そこまで語ると母は一度話を止めた。

母の目には悲しみや後悔が見えた。

まるで話を続けるのに自分の罪をさらしていくようだと千沙は感じていた。

千沙は早く続きを聞きたかったが初めて見る母の様子に先を促すことができない。

しばらくして再び語りだした…



小さかったから覚えていないと思うけどあの日は私とあなたも含む一族の半分以上が雪村家の里を離れていたの。

奴らはその時の狙っていたの。

様子がおかしいと思って里に戻ったけどもう遅かった。

雪村家や里に残っていた一族のみんなは殺され、家はほとんど焼き払われていた。

貴方のお父さんもこの時に死んでしまったの。

里を襲ったのは戦への協力を求めてきたやつらだった。

里を襲った理由は簡単よ。

戦への協力を断ったから。

味方になれば心強いけど敵になると厄介だと思ったのでしょう。

だから雪村や小瀧を消した。



『そんな…。ひどい。』

いつの間にか千沙の目からは涙がこぼれていた。

母は小さく微笑みながら言った。

「すべては私の責任。あの日里を空けたりしていなければあんなことにはならなかった。」

そんなことはないというように千沙は頭を横に振った。

『母様は悪くない!!悪いのは郷を襲ったやつらで、母様は悪くない!!』

泣きながら訴える娘の姿を見て母は少し気持ちが楽になったが、それでも自分の犯した過ちは決して消えないことを母は知っていた。

「私は一族の使命を…、雪村家を護るという小瀧の使命を果たせなかった。


千沙は見た。

母が涙を流す姿を初めて見た。

だがその涙もすぐに止まり母の目には強い光が宿っていた。

希望や期待のような…。

だが今の千沙にはその光が何を意味しているのか分からなかった。


そして母はまた語り始めた。

先ほどまでとは違い声も表情も優しくなっていた。
 

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