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□年上彼女
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「…これ、何?」
見知った物を見つけたのに、何、なんて馬鹿げた質問をしてしまった。
指先で摘み、ぴっと広げて見せる箱が開封されている避妊具。俺が先輩の部屋に来たのは今日が初めて。
明らかに昔の男のもの…と、目つきが鋭くなるのを自覚する。
あからさまに『しまった!』という表情をしている先輩に、いつもは湧かない黒い感情を覚える。
ここで俺のために準備した…とか友達にもらった、とか上手い言い訳を言える女なら、そもそもこの人は俺のものにはなっていなかった。
年上のクセに中々決断できない女。
何度も泣かされた彼氏と、別れるまで時間のかかった女。
俺が好きだと何度も告げたのに、俺のものになるまでえらく時間がかかった女。
囓りかけのパワーバーをテーブルに投げおき、荒々しくなる手つきを自覚しながらペットボトルの水を煽る。
「何これ、って聞いてんの先輩。元彼が置いてったゴム使いたい奴なんていると思ってんの?」
「違う!」
「何が違うの?」
出来るだけいつも通り、苦労して笑顔を引き出して問いただす。
「…置いてったんじゃなくて、私が準備してた…から…正確には彼のじゃなくて…」
ごにょごにょと全く言い訳になっていない言い訳を並べる先輩にため息が漏れそうになる。全然わかってない。
「アイツの使いかけって事は変わんねぇだろ、それに。」
腰を浮かせ、隣に座っていた先輩を押し倒す。
「こーゆーのは男が準備するもんだって知らなかった?」
手を伸ばし、人差し指と中指でポケットに忍ばせていたものを取り出して目の前に差し出す。
「しっ新開くんのだって…新品かどうか分かんないじゃん…」
ドキリ。
けれどここで顔には出せない。どうせ先輩が好きだと自覚してからは使っていないから時効だ。時効。
そんな考えを悟られないよう、優しく穏やかに見えるよう、目尻を下げて笑いかける。
可愛いウサギには、優しく、優しく。これから美味しく頂くのだから。
「買う時、超恥ずかしかったんだけど。」
ニコ。作り笑顔すぎてそんな音が聞こえそうな程の表情を向ける。生憎そんな羞恥心は微塵も持ち合わせていない。嘘も方便。
「だから、な、先輩。アイツの事、彼って読んだ事は許すから。」
長い髪がかかる項に顔を埋める。
「もう、限界。これ以上待つと嫉妬でめちゃめちゃにしちまいそうだから。早く…俺とやらしー事、しよ?」
先輩が好きだと言ってくれた笑顔で告げる。
バキュン。
「絶対あいつより気持ち良くしてやっから」
あんな、クソ男の事なんか記憶から消えればいいのに。