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□告白 荒北
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昨日、練習中にまた車に乗り込んで帰るみょうじなまえを見かけた。

そして同じ車で登校してきたのを見かけたのが今。



「ってコトはァ…つまりそーゆーコトだよなァ」

一人ペダルを回す足は止めずに独りごちた。

口に出せば急にペダルが重くなった様に感じ、舌打ちをしてボトルの水分を口に含む。


割といい感じだ、と思っていたのは自分だけなのか。

自転車を始める前に比べると頻度は減ったが、日に何度か震える小さな電子機器には『みょうじなまえ』の名前が表示されてる。

アイツから送られてくるのは、大体が下らない内容やピコピコ動くキャラクターで。
でも返ってそれが胸をくすぐるから、そんな事を気どられない様にできるだけ素っ気なく返信する。

にも関わらずこちらから送ったものには、時間に関わらず直ぐに反応が返って来る。

教室内で素っ気なく渡される飴も、他のオトコに配っているのは見たことがない。


ハッ、女って分かんねーのォ。




ざっとシャワーを浴びて教室へ入り席に着くと、一度流した汗がまた吹き出してきた。


「荒北くんすごい汗、これ使っていいよ」


…蝶々みたいな女だな。
ひらひらと近くにいるかと思えば、目で追っている隙に手の届かない所まで行っている。

机の目の前に立つみょうじなまえを見上げ、サンキュ、と差し出されたタオルを受け取ると、
「食べる?」
と差し出された飴がふた粒、白い手のひらにのっている。


酸味のある方を指でつまみ取ると、こっちも、と細い指が残したもう一粒を机の上に残していった。


白い指先が瞼の裏に残る。
細くて、真っ直ぐで、さくら色の爪。

あぁ、噛みつきてェ。
綺麗な指に思いっきり歯を立てて、どういうつもりでこんな事をしているのかと問い質したい。

痛みを堪えるみょうじなまえは、どんな表情をするのだろうか。
今朝の車の男は、そんな表情をあいつにさせているのだろうか。

歯を立てて痛いと泣けば舐めてやり、スカートの裾から手を……
あ、ヤベ。学校だ学校。

こめかみに流れ出た汗を拭き取ると、タオルから女の香りがして、本格的にヤベェ、とごまかす様に飴を口に含んだ。


汗を拭いたタオルを見れば、ミッフィーチャン。

あー。はいはい、ミッフィーチャンね。
やられた。ンなトコまでツボすぎなんですけどォ!!


このタオルと同じ香りがするアイツは、この飴の様な味だろうかと、舌先で口の中に入れたものをつついてみた。


アイツが俺のものになれば良いのに。
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