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□好きすぎて
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賑やかな朝の教室。
その中でも一際目を引く集団になまえはいた。


ヘアスタイルの話、メイクの話、毎日顔を合わせているけれど、少女達の話は尽きることが無い。


いつも通りの朝。
けれどなまえはその中で浮かない顔をしていた。


…なんだか靖友に避けられている気がする。


10代の2人が初めて身体を重ねたのはついこの間の事。
とてつも無い恥ずかしさの中、荒北の腕の中で初めての痛みと言いようの無い幸せを味わった。



その後から、なぜか靖友と視線が合う事が減った。

今までなら気付けば視線は絡み合い、言葉を交わし、2人の秘密の場所で落ち合えば唇を重ねていたのに。


あれ以来キスをしていない自分の唇に指を当てながら、どこか変な所があっただろうか、と考える。


セックス以来避けられている、という事はどこか靖友にとって気に入らない部分があったのだろうか。


今もチラリと荒北の席を窺えば、なまえを悩ませる張本人はイヤフォンを耳に突っ込んで窓の外を見ている。



今までなら、近寄ってくる男子を片っ端から食い殺しそうな目でこちらを見ていたのに。


すぐ隣で話しかけてきている男子生徒がいるというのに、こちらを見ようともしない。


よし。
これ以上うじうじ悩むのは性に合わない。
直接原因を聞いてみよう。
下着が好みじゃなかった?
完璧に身体の準備もしたつもりだったけれども、どこか気に入らない部分があった?

それとも…
一度ヤッたから私の事なんてもうどうでも良くなった?
私とのセックスはつまらなかった?


不安はたくさんある。
でも挽回のチャンスさえあれば。






コンコン、という扉を叩く音がしてドアを開けると、ここ数日荒北を悩ませる張本人が睨みつけるように立っていた。


「…どうやって入ったの」

ぐい、となまえの背中に手を回して周りにさっと目を向けるも、立っているのはなまえ1人。


ヒヤッとした。
ここは男子寮。どこかの扉が開いて連れ込まれてしまえばもうお終いなのだ。
思春期の男ばかりのここに1人で立っているなんて正気の沙汰ではない。

そして自分がどんな容姿をしているのか分かっているのかと罵りたくなる。
長い髪に縁取られた整った顔は他校でも有名で、大きく張り出た胸と細い腰は制服でさえ隠せていない。
それに加えて、短いスカートから惜しげも無く晒されている細い脚は十分自慰の対照どころか、ここにいるサル達を思い余って乱暴な行動に移させてしまう事すらあるかもしれない。



自覚が全く足りていない。

慌てて腕の中に囲い込んだその美しい顔が言う。
「新開くんに連れてきてもらった」


「…他の男に頼むんじゃねェヨ」
と呟き、部屋に招き入れた。


「あのなァ」
「荒北くん、なんで私の事避けてるの?嫌いになった?」


何と言ってこの状況の危なさを伝えようかと口を開いた所に、なまえは予想外のセリフを繰り出して来た。


俺の今の心の中を覗けばそんなセリフは口にできないだろう。


「…せっくす、よく無かった?」


セックス。

涙目でこちらを睨みつけるなまえからあまりにも直接的すぎる単語が出てきて目を見開く。



荒北は腕の中のなまえを見下ろす。
小さな顔。
長いまつげ。
甘い色の唇。

睨みつけられているはずなのに、この愛らしい唇から出たセックスという単語のせいで、今すぐ襲って気持ちいい事して、と言っている様にしか見えない。


誰よりも一番近い距離でなまえを見つめ続けている荒北がそう思うのだ。
彼女と目が合うだけで他の男が勘違いしない訳は無い。


荒北は貪るように唇を重ねる。
舌をねじ込み、思うまま唾液の甘みを堪能し、下唇に歯を立てながら離れる。


セックス。

「良かったに決まってるじゃねーか」

鼻と鼻が擦れる距離でささやく。


「朝も夜もシコって…擦切れそうなってんのに」


ぐっと彼女の腰を抱いて、下半身を押し付ける。


「気ィ抜いたらなまえ見るだけでこんななるんダヨ」


再度押し付けたそこはもうハッキリと反応を示していて、一度知ってしまった彼女の中へもう一度、今すぐにでも入りたいと訴えている。


抱きしめて、赤くなった顔を知られたくなくて、その艶やかな髪へ唇を落とす。


「そんなん…俺ばっか好きみたいで格好悪ィじゃねーか」



照れながらも、彼女を抱きしめた手は自然に下へ下へとおりていった。

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