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□買い物をする荒北
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「後は?何かいる?」

『んー、飲み物だけでいいよ』

「オッケ。すぐ帰っからァ」


ドラッグストアで片手には買い物カゴ、もう片方の手にはスマートフォン。

電話の向こうには、俺の部屋で待っているアイツ。



レジに並ぼうとした時に気が付いた。
機械的にバーコードを読み込んでいる、アルバイトの名札を付けた店員。

…よく、アイツの周りをチョロチョロしている男。
いつも人の女の隣に立って俺に寄越す視線は、隠す事無い敵意に満ちている。


別の店員が開けたばかりの、隣のレジから聞こえる『こちらへどうぞー』という言葉を無視して男のレジへ歩いて行く。


視線はレジの男に向けたまま、通話を終えるため耳から離そうとしたスマートフォンを再び構え直し、意図的に大きな声で呼びかける。



「なまえ?」


視線が、男と合う。


「もう服着たァ?風邪引くからァ、ちゃんと服着て待ってろヨォ」


我ながら悪い顔をしている、と自覚できる笑みを浮かべて通話を終える。


大きな音を立てて買い物カゴをキャッシャー台に乗せる。


「あぁ、店員サァン?コンドーム、ってどこにあるんスかねェ?」

「…あちら、です」

「ドーモ。すぐ取ってくるんでチョット待っててもらってイイっスかァ?」


どちらの視線も、獲物を狙う時のそれ。


わざとゆっくりとした足取りで指差された方へと向かい、避妊具を手に取り戻る。


ピ、とバーコードをスキャンする男の手を見下ろす優越感。
レース時のそれとはまた違った、男として満たされるそれ。



今日、コイツはなまえを想像しながら自分を慰めるのだろうか。


普段なら他の男がオカズにしていると考えるだけで頭の血管がブチ切れそうになるけれども、今日は特別に許してやれる。


今この男の手にあるゴムは、これからなまえの体内へと入る。
なまえの手によって俺の下半身に被せられて。



お釣りを受け取る時に、少し顔を寄せて小声で話しかける。


「このゴム、これからなまえチャンに入るヨォ」


男の顔が驚きに満ちたものになった後、悔しそうに歪められ、凄い目で睨まれた。


ククッと抑え切れない笑い声が、喉を鳴らしてしまう。



「なまえオカズにしてシコんの?」



パコン。

会計済みのカゴに移された、紙袋にも入れられなかったコンドームを指で弾く。




ククク。
さあ。
敵を仕留めて疼く身体を、鎮めに帰ろう。







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