パイレーツ・O・C 短編集
□難攻不落
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「君は素晴らしいな、君ほどの女性に俺は会ったことがない!まるで真珠のように滑らかで美しく輝く柔肌に、底の深い海の如き瞳に、小鳥の囀りのような可憐な声色…その柔らかい唇で俺の名前を呼んでくれないか?その美しい手で、指先で俺に触れてみたいとは思わないか?」
「呼びたくないし触れたくもないわ」
汚らわしい
そう吐き捨てて歩き出す女の後ろ姿を眺めながらジャック・スパロウは小さく肩を落とすが、口元は不敵な笑みを絶やさない
「お待ちなさいお嬢さん、俺の話を最後まで…」
「急いでるの、邪魔しないで」
「つれないなあ、笑っておくれよ」
「……貴方に笑いかけるくらいならその辺の豚にキスした方がましよ」
「やっとこっちを向いたな、そばかすがチャーミングだ」
「生憎、私はこのそばかすが大嫌いなの」
「そうなのか、こんなに可愛らしいのに」
「触らないで、病気が移るわ」
「酷い言われようだな、大体病気って何の病気だ?」
「移り気で気紛れで飄々としていて一所に留まらない、一体何人の女性に同じような台詞を囁いてきたのかしら?」
「侮辱しないでもらいたいね、何人なんてそんな数じゃ足りないな、俺を誰だと思ってる?」
「女たらし」
「違う違う、ジャック・スパロウ船長だ」
得意気にそう言い放つが女は既に歩き出しており、宿屋の扉に手をかける所だったものだから、空かさず隣に立ち腰に手を回すと女は見るからに身体を強張らせて固く瞳を閉じた
男性経験のない女特有のうぶな反応に思わず男の性が疼いてしまう
昂って身体中が熱るように錯覚する
口付けて愛を囁けばこの女は俺のものに、少々手こずったがそれに見合った報酬は得られそうだ
そっと唇を寄せると女は震える声で呟いた
「初めては好きな人にあげたいと思っていたの」
「俺が好きだろう?」
耳元に鼻先を擦り付け、胸の高鳴りを知らしめるかのように鼻息荒くそう囁く
「ええ、悔しいけど貴方が好きだわ」
「………」
素直な回答に思わず呆気に取られていると顎に何やら硬いものが宛がわれた
「殺してやりたいくらい好きよ、ジャック・スパロウ船長?」
「………へえ」
「本当に、殺してやりたいくらいだわ…」
カチャリとトリガーが引かれる
「簡単に手に入ると思わないことね、私はそんなに安くなくってよ」
「……いいね、ますます欲しくなった」
生娘
気の強い女は嫌いじゃないな
どうすれば抱かせてくれるんだ?そんな事言えなくなるくらい私を好きになればいいのよ抱きたいと思わなくなるくらい?俺に死ねと?死ねばいいのに