ゆっきーぱらだいす

□チーフと私
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「コレとコレとコレ、二日で」

 私のデスクは白い塔がそびえ立ったかのように山積みされた紙の束で一瞬にして視界不良になった。
 おかしいな…さっきまで前のデスクの人の顔が見えてたのにな。

 だいたい『コレとコレとコレ』って言われても、紙の量が多すぎてどこから区別されてるかまったく分からない。

「…あの…矢井田チーフ…」

 流石にカチンと来るものがあり、原因を作りやがった張本人に抗議のひとつでもしてやろうと思った。

「なんだ?」

「この量を明後日というのは…ちょっと…」

 ちょっと短くないですかと言おうとするも、

「ほう…君には明後日でも余裕なのか?…なら、明日で頼むよ。無論、前坂君ならこれぐらいどうってことないのだろうがね…」

 嫌味たっぷりに奴は口角を少しだけ上げて私を挑発した。

「ええ、そうですね、明日なんてちょちょいのちょいですとも。なんなら今日中でやらせていただきますわ!」

 矢井田 隆(やいだ たかし)。私と同期にして今年度から情報処理部チーフという肩書に昇格し、同い年ながら私の上司という関係になった。
 それはいいのだ。
 実際仕事の出来る男だから仕方ない。

 …でも、彼は何故かやたらと私に風当たりがきつい。


「言ったからには今日中にやれよ」

 ムスッとしながら矢井田は踵を返してデスクへと戻って行った。

 挑発に乗せられ大見栄を切った自分が毎度情けないけれど、どうしても矢井田相手に変な意地を張ってしまう癖が直らない。
 弱いところは見せられないという負けず嫌いな私の性格ゆえだ…
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