ゆっきーぱらだいす

□チーフと私
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「…大丈夫なの?」

 紙の束の横からヒョイッと顔を出したのは前のデスクに座っている今岡さんだ。
 こちらは私より二つ上の先輩社員だが、のんびりとした性格もあいまってか肩書はまだない。

 そもそも矢井田がチーフに昇格したこと自体がかなり早い出世なのだ。27歳のチーフはこの会社では一番若い。

 今岡さんなんて後輩が上司だから私なんかよりやりづらいかもしれない。
 それでも本人はいつものほほんとしてまったく気にしてないようだ。

 …はあ、癒されるわあ。

 今岡さんのゆるキャラは矢井田との張り詰めた日常の中で私にとっての癒し。

「大丈夫です」

 今夜は徹夜決定だと悲鳴をあげる胸中を癒しの今岡さん相手に吐き出すわけにはいかない。

「恵たんはすごいな〜、僕だったら泣いちゃうよ、この量」

 前坂 恵子(まえさか けいこ)という私の名前の愛称で今岡さんは私を『恵たん』と呼ぶ。

 またこの今岡さんらしい愛称のつけ方が可愛らしい。

 矢井田もこれくらいの愛らしさがあればまだいろいろ許せたものを…どうしていっつも私を目の敵みたいにするんだろうか。

 気に入らないんだろうね、私の存在が。
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